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アイドラフト春の超短編コンテスト|千葉翔也さんインタビュー

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2023-04-11 トピックス

2023年2月~3月にかけて行われた「アイドラフト春の超短編コンテスト」。
テキストエディタアプリidraft(アイドラフト)で執筆した500文字程度の超短編小説を、Twitterにて応募するスタイルで行なわれました。
700以上の応募の中から選ばれた優秀作品の2作品を、声優・千葉翔也さんに朗読いただきました。

朗読担当声優 千葉翔也さん

  • 千葉翔也さんプロフィール
    8月29日生まれ。東京都出身。主な出演作はアニメ「青のオーケストラ」青野一役、「あやかしトライアングル」風巻祭里♂役、「文豪ストレイドッグス」シグマ役、「ブルーロック」今村遊大役、「クールドジ男子」四季蒼真役、「TIGER&BUNNY2」仙石昴/Mr.ブラック役、「86-エイティシックス-」シンエイ・ノウゼン役など

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朗読の様子

今回の朗読収録は、都内某所で行われました。
収録が始まるまでの現場は和気あいあいとした雰囲気。
しかしいざ収録部屋の扉が閉まると、雰囲気は一気に引き締まりました。

収録スタートはまずテストから

まずはテストで、間の取り方や感情の乗せ方などを確認します。
さすが千葉さん、テストは一発OKで終了です。
修正指示は一切なしで、本番へと移行します。
『はるのうた』は、登場人物の男女2人の掛け合いで展開する短編です。
一人二役を難なく演じ分ける千葉さんに、早くもその実力を垣間見た気がしました。

いよいよ優秀作品『はるのうた』収録本番スタート

収録本番は、文章の読み飛ばしや単語のイントネーションなど、調整を繰り返しながら進みます。
途中、間の取り方に感情が乗ったことで、テストのときとは変わってしまい、録り直しが発生しました。
千葉さんからは、登場人物の心情についての確認が入ります。
素人がただ聞いているだけでは気付かなかったキャラクターの心情をすくい取り、千葉さんは見事に声で表現していきます。
セリフ部分の朗読にどんどん熱が入り、読むたびにブラッシュアップされていきました。
声優という職業をされている千葉さんにしかできない技術で、作品に新しい色が付けられたようです。
500文字の短編小説が、声優・千葉翔也さんの朗読作品へと形を変えました。

2作品目『春の手紙』収録の裏側

休憩をはさんだ後、2作品目、『春の手紙』の収録へ。
『春の手紙』は、全体をどういったトーンで朗読するのかがポイントでした。
暗く読むのか、明るく読むのか、作品を表現するのに最適なトーンを探ります。

わずか5文字のセリフに込められた想いを探る

テストでチェックが入ったのは1つだけ、「できるだけ」のイントネーションです。
千葉さん曰く、
「たとえば“できるだけ頑張る”と“できるだけ頑張る”って違いますよね?」
全身全霊で取り組むのか、能力の範囲内で取り組むのか、このシーンの最適解はどちらなのか。
千葉さんの再現した「できるだけ」という5文字の音は、登場人物の意図を忠実に再現しているかのように、ぴったりはまった印象でした。
千葉さんの感性で紡がれる『春の手紙』作中のワンフレーズ。
言葉にならない登場人物2人の想いが、いきいきと浮かび上がるように感じられました。

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千葉翔也さんインタビュー

今回のインタビューは、2作品の朗読収録を終えられた後、優秀作品の感想を中心にお話を伺いしました。

優秀作品『はるのうた』|作品の印象と収録中のこだわり

——2作品ともさすがの空気感で、うっとり聞いていました。
千葉さん:ありがとうございます。嬉しいです。

——まず1つめの作品『はるのうた』、いかがでしたか?
千葉さん:冒頭の「幽霊が出る」の書き出しから、「非日常の感じなのか」と読んでいたら、最後は先輩と後輩の別れにつながっていて、そういうことだったのだと。

——書き出しを裏切ってまっすぐな作品でしたね。
千葉さん:全体的にすごい爽やかな皮肉がつまっているというか、本心を素直に言えない感じが端々に出ていて。
朗読をしてみるまでは、こんなに裏腹な気持ちがこもる作品だとは気が付きませんでした。

——作品の第一印象とは違いましたか?
千葉さん:最初、文字で読んだときは「発見」みたいな感じだったのですが、実際に朗読してみるとすごく切ないというか、不思議な感情になりました。

——500文字って“超”短編ですよね。これまでのお仕事でご経験はありますか?
千葉さん:ここまでの短編は、仕事としても読者としても少ないですが、想像力が掻き立てられてとても楽しかったです。
登場人物の関係性とかバックボーンを際限なく想像してしまいますよね。

——登場人物2人の関係性、どのように読みましたか?
千葉さん:お互いがお互いの気持ちをすごく分かっていて、でも2人ともそういうことは口にしない。
短いセリフの中に、「自分のことは忘れて先に進んでほしい、でもちょっと寂しい」という気持ちがあるのかなって想像したんですけど。
やるたびに発見があるので、いくら突き詰めても切りがない作品だなと感じました。

——リテイクを重ねるごとに、どんどん気持ちが入ってきているように感じました。キャラクターの心情を感じ取って演じ分ける表現力は圧巻でした。
千葉さん:朗読ってある程度俯瞰してやるべきだとは思うのですが……。
セリフが多めの短編だったし、分かっている感情は拾いたくなっちゃうんですよね。
その塩梅がやればやるほど難しくて……。

——「いくら突き詰めても切りがない作品」とおっしゃっていましたが、収録の終わらせ方というか、千葉さんの中での決着の付け方はどうだったんですか?
千葉さん:最後は読み手にゆだねないと、答えの提示になってしまうなと思ったので、ここで終わりと自分で線を引きました。
やればやるほど深い作品だなと思いました。

 

優秀作品『春の手紙』|作品の印象と収録中のこだわり

——もう一つの優秀作品『春の手紙』ですが、作品の第一印象はどうだったのですか?
千葉さん:読んだ瞬間に、めちゃくちゃ好きな作品だなと感じました。
読者への裏切りがたくさんあるのが、読んでいて面白かったです。
書き出しがいきなりセリフから始まるのも、小説らしくていいなって思いながら朗読しました。

——収録でこだわったシーンはどこですか?
千葉さん:「できるだけ大事にしてくださいね」って後輩の彼女が栞を渡すシーンですね。
彼女は、口に出す言葉と違う気持ちを抱えている人だと感じました。

——「できるだけ」の部分は、テストのときからこだわってらっしゃいましたね。
千葉さん:あのシーンは普通に読んだら「できるだけ」なんですけど、単純な5文字ではないと思います。
いつまでも何よりも大事にしていてほしいと彼女からは言えないし、言える関係でもない、というふうに読んでいて感じたんです。
なので、「できるかぎり」「できる範囲で」の意味で、「できるだけ」と読みました。

——彼女から渡される栞がストーリーのカギでしたね。
千葉さん:栞の押し花に込められた花言葉も、めちゃめちゃ切ないですよね。
2人の関係をこの言葉でしか表わせない彼女の切なさも、先輩が読み取っている彼女の感情も、文中では言葉にされていません。
そこが心と心の会話だと感じていいなと思いました。
そして、それを踏まえた最後の一文。びっくりして読み取るのに時間がかかりました。

——そんな印象的なラスト、千葉さんの中ではどう決着を付けたのですか?
千葉さん:最後は読み手の方々が思い描いたものでいいなと思いました。
作品のラストは、本当にこの後が大事ですよね。
『春の手紙』という小説のここまでは序章に過ぎず、この後どうなるか、期待や想いすべてが込められたラストだと思います。

 

2作品を収録し終えて|千葉さんにとっての朗読とは

——優秀作品の2作品は、奇しくも「先輩」「後輩」の2人の登場人物が出てくるという共通点がありました。
千葉さん:『はるのうた』=過去で、『春の手紙』=未来を想起させるような内容でしたね。
どちらも「先輩」「後輩」が出てくるわずか500文字の短編なのに、すごく違っていいなと思いました。

——朗読するにあたり、どんなことを意識されましたか?
千葉さん:朗読って、読み手のパーソナルな部分が出ると思うんです。
その人が読むからこういう言い方になってこういう聞かせ方になる。そこに責任を持たないといけないのが朗読だと思っています。

——今回の朗読には、千葉さんのパーソナルな部分が込められているということですね。
千葉さん:かっこいい声で読むとか、切なく読むとか、声の芝居としては簡単にできるんです。
けど、僕が朗読させていただくにあたって、盛らないというか、僕が素直にこの話をしているというのを大事にしました。
そうしないと、転じて僕がやる意味が無くなってしまうと思うんですね。

——今回の朗読は盛らない、飾らない、自然体の千葉さんということですか。
千葉さん:今回の朗読、すごく若い声に聞こえたと思うんです。
特に『はるのうた』は、書かれてはいませんが、主人公はきっと学生さんですよね。
演出的に渋くやってくださいと言われればやるんですが、僕がやるなら必要ないかなというのがあって。
芝居ならその役を表現しないといけないし、ナレーションは番組のテイストに合わせないといけない。
でも朗読って自然と出たものが答えな気がします。

——朗読とナレーションって違うのですね。朗読は答えを見せ過ぎちゃうとだめってことなのでしょうか。
千葉さん:僕的にはそう思っています。

——今日実際に朗読をお聞きして、声の演技に聞き入っちゃったのですが、演じている側は伝えきらないことを大事にされているんですね。
千葉さん:ものによると思うのですが、「」でくくられているセリフは人の言葉と伝わればいいから、100%の芝居をやっちゃうとそれは違うのかなと。ドラマCDではないですし。
僕は男性なので、女性の声を読むときにキーを高くすればいいのかというと、決してそうではないと思っています。
登場人物それぞれのパーソナリティが感じられるといいですよね。
『はるのうた』なら、ぶっきらぼうで素直になり切れない部分が出たらいいなと思うし、『春の手紙』なら、明るくふるまっているのが分かればいいと思います。

——今まで朗読って声優さんというより、ナレーターさんのお仕事だと思っていました。
千葉さん:アニメだったらその役に100%なりきって演じます。
ナレーションはナレーターっていうポジションで声をあてます。
対して朗読の場合、話し手は何者でもないんです。
主人公ではないから、俯瞰的な視点を残すのが大事だと思うんです。その俯瞰的な視点を保ちつつ、自分が感動した部分が乗ればいいなって。

——俯瞰的に感動を乗せる、ですか。
千葉さん:自分が感動した部分が乗せられたら、それこそが朗読じゃないでしょうか。
感動が乗っていないなら、それは単なる文字の音声再生だから。
僕が「ここが素敵」だと思った部分が素敵に伝わればいいなって思っています。

千葉翔也さんからご応募いただいた皆様へ

千葉さん:たくさんのご応募をいただいて嬉しかったです。こういったお仕事が今までなかったので、とてもいい経験をさせていただきました。

情景を思い浮かべるということがどこまでも声優にとっては大事だと思うので、短い中に凝縮された思いを想像するだけでも楽しかったですし、それを表現するためにもっともっと感性を磨きたいなと思いました。

願わくばまたこういった機会があれば良いなと思います。

 

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インタビュー:新井雄貴/執筆ライター:片岡理子

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