出典:青空文庫
・・・この社会の正義というものについて大きい疑問を呈出したのがユーゴーの「レ・ミゼラブル」であり、その主人公ジャン・バルジャンの飢えである。 六月四日の新聞は世界の人の目に何ともいえない皮肉さで腹の底までしみとおるような写真をのせた。六月三日・・・ 宮本百合子 「動物愛護デー」
・・・ 開化期の明治文学の内容は翻訳小説に尽きていると言えるであろうが、ここでも我々の遭遇するのはシェクスピア、スコット、ユーゴーやデュマであり、巨大なバルザックの姿は見当らない。 僅か三年ばかり前、新潮社が大規模に刊行した世界文学講座の・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ そういう社会をのぞみ、信義をもち得る社会を求める心からバルザックは反対党――共和党に対して王党となったのか。 ユーゴーは共和党であった。そしてナポレオン三世の帝政布告に抗し二十年間亡命、一八七〇年普仏戦争による帝政崩壊後かえる。「・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・ フランスではユーゴーが宰相であり、ドイツではゲーテが宰相であり、イギリスで十八世紀文学を指導した文学者はそれぞれ顕職にあったという例は、今日までのところわが日本の社会では再現し難い。日本の近代社会の成り立ち、官製文明国としての特質が、・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・の作者、フランス・アカデミーのユーゴー百年祭にパリへ招待された国際的作家マクシム・ゴーリキイである。 ある日ゴーリキイがペテルブルグの数多い橋の一つを歩いていると、理髪屋風の男が二人づれでゴーリキイを追い越して行った。が、一人の方がびっ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・の作者、フランスのアカデミーからユーゴー百年祭の招待が来た国際的な作家マクシム・ゴーリキイとして。トルストイ、チェホフ、アンドレーエフなどが知友に数えられるようになっていたが、その時分のゴーリキイの風采というものはいつもチェホフを辟易させた・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」