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・・・ヤコブ、ヨハネ、アンデレ、トマス、痴の集り、ぞろぞろあの人について歩いて、脊筋が寒くなるような、甘ったるいお世辞を申し、天国だなんて馬鹿げたことを夢中で信じて熱狂し、その天国が近づいたなら、あいつらみんな右大臣、左大臣にでもなるつもりなのか・・・
太宰治
「駈込み訴え」
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・・・キリストの復活を最後まで信じなかったトマスみたいなところがある。いけないことだ。「我はその手に釘の痕を見、わが指を釘の痕にさし入れ、わが手をその脅に差入るるにあらずば信ぜじ」などという剛情は、まったく、手がつけられない。私にも、人のよい、た・・・
太宰治
「散華」