出典:青空文庫
・・・ご存じでしょうが、それはハイネの詩に作曲したもので、私の好きな歌の一つなのです。それからやはりハイネの詩の「ドッペルゲンゲル」。これは「二重人格」というのでしょうか。これも私の好きな歌なのでした。口笛を吹きながら、私の心は落ちついて来ました・・・ 梶井基次郎 「Kの昇天」
・・・ 細田氏は、大戦の前は、愛国悲詩、とでもいったような、おそろしくあまい詩を書いて売ったり、またドイツ語も、すこし出来るらしく、ハイネの詩など訳して売ったり、また女学校の臨時雇いの教師になったりして、甚だ漠然たる生活をしていた人物であった・・・ 太宰治 「女神」
・・・この詩集、ごらんなさいませんか。ハイネという人のですよ。翻訳ですけれども仲々よくできてるんです。」「まあ、お借りしていいんでしょうかしら。」「構いませんとも。どうかゆっくりごらんなすって。じゃ僕もう失礼します。はてな、何か云い残した・・・ 宮沢賢治 「土神ときつね」
・・・ カールと『独仏年誌』を中心としてその家に集る亡命者の中には、卓抜な諸部門のチャンピオンたちにまじって、当時四十八歳だった詩人ハイネがいた。カール・マルクスより二十一歳も年長であったハイネとカールとの間には、真実な友情がむすばれていた。・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ 木綿更紗の布を三角に頭へかぶった婆さんが、ハイネを知っている。イプセンを知っている。モーパッサンをも読んで貰ったし、ロシアのものなら古典の代表作と現代の主なものは知っているという結果になった。そして、いい年をした貧農出の農場員は自分で・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ベランジェの小さい一巻とハイネの詩集ぐらいが彼の全財産である。 彼の周囲の人々はすべて、卑劣な奴も、智慧のある奴も狡い奴も、ゴーリキイに、彼等と一緒に住むことは出来ないと思わせるような人々ばかりであった。「何とか他に生きようはないものだ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・と息子が赤になることを警戒し、息子の書斎をしらべたりする。ハイネの「アッタ・トロル」を「読んでいるようだと、よほど注意しなくちゃいけませんね」「もちろんだ、うっちゃっておいたらそれこそ大変だ。」こういう警戒にもかかわらず、「己は赤の方の心配・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」