出典:青空文庫
・・・果物やばらのバックは新しいと思う。「初夏」の人物は昨年のより柔らかみが付け加わっている。私は「苺」の静物の平淡な味を好む。少しのあぶなげもない。 横井礼市。 この人の絵はうるさいところがなくてよい。涼しい感じがある。この人の絵の態度は行・・・ 寺田寅彦 「昭和二年の二科会と美術院」
・・・壁に布切れやしわくちゃの紙片をだらしなく貼りつけたのをバックにして、平凡な牛乳びんに二本のポインセチアが無雑作に突きさしてあるだけである。全体の感じはなるほど悪くないが、今枕もとにある本物と比べて見ると、どうもなんだか葉の排列のしかたがおか・・・ 寺田寅彦 「病室の花」
パール・バック女史の問題のつかみ方は、さすがに作家らしくて、わたしにも皆さんにも同感されたのだと思います。パール・バックはアメリカの今日の文明をちょうど子供が新しいすばらしい玩具の作り方を発見して、それに夢中になっている状・・・ 宮本百合子 「アメリカ文化の問題」
パァル・バックはアメリカ人であるが中国で成長して、中国の生活を小説にかく婦人作家である。彼女の作品をまだよまない人でもポール・ムニとルイゼ・ライナーが主演している「大地」は見物したであろうと思う。ひところ、あの映画もこの頃・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
・・・ 柔い色のオール・バックの髪や、芸術観賞家らしい眼付が、雑然とした宿屋の周囲と、如何にも不調和に見えたのである。始め、彼はAを思い出さないように見えた。何となく知ろうと努め、一方用心しているように感ぜられ、自分の私かな期待を裏切って、初・・・ 宮本百合子 「思い出すこと」
岩波文庫『魯迅選集』とパアル・バックの『分裂せる家』魯迅という作家が支那の一九二四・五年からの八九年間に亙る急激な社会的推移の間で、この作家の偉大な特質である人間的正義感と民族解放の慾求とをどう成長させたかと云う点で、こ・・・ 宮本百合子 「カレント・ブックス」
・・・ウォーレスの公正な政治的態度にバックされながら。そして、世界の平和と民主を欲する数千万人の注視のもとに。 日本の新首相が施政方針演説もしないで公務員法案を押しきろうとすることは、古い政治家の厚顔な腹の力かもしれないけれども、アメリカの大・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・せるかも知れないし、議員の資格の再審査をするというのも、まだ私共の十分準備されていないすきに乗じて、たくさんの反動的な、つまりわれわれをまた不仕合せなものにしてしまう力がいろいろの形で政党の力をもってバックしている。それを世界が見ているから・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・ パール・バックの「この誇らかな心」という小説は、生活の現実としてそういう課題を感じている今日の日本の読者にどんな感銘を与えているだろうか。 作者がこの一篇の女主人公として描き出しているスーザン・ゲイロードは、女のなかの女ともいうべ・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・アジアの文学は、パール・バックやエドガー・スノウやオーエン・ラティモアなどの優秀な西欧の人間性を通じて世界文学に座をつらねる段階をぬけて来ている。中国は中国の人々自身の物語をかたりはじめた。インドも、朝鮮も、インド・シナも。アジアは、現代史・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」