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・・・とりわけダンテにとってベアトリーチェは善の君、徳の華であった。 青春の黄金の日において、悪ズレのした、リアリスチックな女性侮蔑者であるほど悲しむべきことはない。ましてそれは早期の童貞喪失を伴いやすく、女性を弄ぶ習癖となり、人生一般を順直・・・
倉田百三
「学生と生活」
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・・・ ダンテを徳に導いた淑女ベアトリーチェ。ファウスト第二部の天上のグレーチヘン。 これらは不幸な、あるいは酬いられぬ恋であったとはいえ、恋を通して人間の霊魂の清めと高めとの雛型である。古くはあるが常に新しい――永遠の物語である。 ・・・
倉田百三
「女性の諸問題」