出典:青空文庫
・・・ からすはカーカーとなきながら、やはり里の方をさして飛んでゆくところでありました。おしゃべりのからすはすぐ、自分の上を飛んでゆくかもめを見つけて、声をかけずにいられませんでした。「かもめさん、かもめさん、たいへんにお疲れのようだが、・・・ 小川未明 「馬を殺したからす」
・・・新宅には三階に寝る妹とカーロー君とジャック君とアーネスト君である。カーロー君とジャック君は犬の名であってアーネスト君はここの主人の店に使っている若き人間の名である。我輩の敬服しかつ辟易するベッジパードンは解雇されてしまった。我輩は移転後にこ・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・「おキレの角はクンクンクン ばけもの麦はザック、ザック、ザ、 からすカーララ、カーララ、カー、 唐箕のうなりはフウララフウ。」 みんなはいつの間にか棒を持っていました。そして麦束はポンポン叩かれたと思うと、もうみ・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・全く、杉森をのせ、カーバイト会社の屋根の一部を見せ、遠く遠くとひろがる田舎の風景は、手近いところで一本、ぐっと廊下の角柱で画される為、却って奥ゆきと魅力とを増しているようだ。 由子は、樟の角机に肱をつき目前の景色に眺め入っていた。樟は香・・・ 宮本百合子 「毛の指環」
・・・ リンゴを二つ持って、カーチーフをかぶった若い女が、大道商人とかけ合って居る。 女乞食が、外国人の女の傍について、「御慈悲深いお嬢さん、小さい娘のためにどうぞ」 女は、見向きもせず歩いて行く。 コムソールが、羊皮外套・・・ 宮本百合子 「一九二七年八月より」