出典:青空文庫
・・・――この話しはモーパッサンの書いたものにあるそうですが、私は読んだ事がありません。私にこの話をして聞かした人はしきりに面白いと云っていました。なるほど面白いでしょう。しかしその面白いと云うのは、やはりある境遇にあるものが、ある境遇に移ると、・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・イプセンを知っている。モーパッサンをも読んで貰ったし、ロシアのものなら古典の代表作と現代の主なものは知っているという結果になった。そして、いい年をした貧農出の農場員は自分でコンムーナの生活記録を書いて見る気になった。モスクワから五千キロメー・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・でさえも、この作家の最良の収穫たらしめなかった。モーパッサンが、「脂肪の塊」と「女の一生」「水の上」の他の何で文学史の上に立っているだろう。自身のロマネスクなるものの源泉を、フランスの社交小説において、こんにち語ることのできる三島由紀夫も、・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・彼はそのとき、アメリカの作家としてスタインベック、フランス古典第一位にバルザック、つづいてフローベール、モーパッサン、スタンダール、メリメ、マルセル・プルーストらの名をあげた。バルザック研究がソヴェトの学者グリフツォフ博士によって行われてい・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・このことは、一見全く反対の作品、例えばモーパッサンの「女の一生」やトルストイの「復活」と切りはなして観察することは出来ない。資本主義の社会そのものが、社会に貧富の差を生み出し、働く人々の階級と働かせて無為に富む階級とをつくり出した。しかもそ・・・ 宮本百合子 「貞操について」
・・・の仮面をはいだ。モーパッサンのほとんど唯一の傑作である「女の一生」を読んだ人は、その昔騎士道が栄え優雅な感情を誇ったと云われているフランスでも、「女の一生」はあんまり日本の無数の女の一生と同じなのに驚くだろう。トルストイは「結婚の幸福」その・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・何も、斯う云うことがあったからと云うばかりではなく、モーパッサンなんか、あんな大芸術家でさえ、先ず第一おかあさんに見せ、主人公を生そうか、殺そうかと云うこと迄相談したと云う美談がある位だものね。そうしようじゃあないかい?」 自分は、母の・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・のカチューシャの経歴とそれを通じて語られている彼女の人間としての抗議は、文学を愛するすべての人に知られている。モーパッサンの「女の一生」も。 これらの古典の中にはわたしたちの心をひきつける人生の姿がまざまざと描かれているが、わたしたち自・・・ 宮本百合子 「文学と生活」