出典:青空文庫
・・・デスカラドンナ事ガ起ルカ知リマセンガ、何デモオ婆サンノ話デハ、『アグニ』ノ神ガ私ノ口ヲ借リテ、イロイロ予言ヲスルノダソウデス。今夜モ十二時ニハオ婆サンガ又『アグニ』ノ神ヲ乗リ移ラセマス。イツモダト私ハ知ラズ知ラズ、気ガ遠クナッテシマウノデス・・・ 芥川竜之介 「アグニの神」
・・・マルコ、ルカ、ヨハネ、ああ、ヨハネ伝の翼を得るは、いつの日か。「苦しくとも、少し我慢なさい。悪いようには、しないから。」四十歳の人の言葉。母よ、兄よ。私たちこそ、私たちのあがきこそ、まこと、いつわらざる「我慢下さい。悪いようにはしな・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・ 故に、病院へ入ってもモスクに於て、病人は決して聖ルカに於てのように日常生活のデテールまでを人まかせにしてしまった安らかな快感は味えない。ニャーニカ達は、私が毎朝茶に牛乳を入れてのむという習慣を決して記憶しない。彼女等の頭は恒に新しい。・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・ ○いよいよ体がわるくなったとき聖ルカに入院。私死ぬか活きるか教えてくれ、死ぬ。では何日もつであろう。はっきりは分らぬが十日。ではこうしては居られぬ、十日あれば相当の仕事が出来る。 早速かえって、祈祷書の翻訳にとりかかった。又ズク麿・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・真黒いミノルカとレグホンが六七羽のんきにブラついて居る。中を一寸のぞいたけれ共人影が見えないので誰かにきいて見ようと思って又牛舎の方へ行きかけると、裏の方から、主婦が出て来た。「まあいらっしゃいまし。よっぽどお寒うございますねえ、お・・・ 宮本百合子 「農村」