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・・・ 神戸の生垣にもカタツムリは這って居たろうがそれを見てロチの心臓は平静であったろうか? ブラジルでコーヒー畑の間を歩いて居る裸足の日本海外移民の魂には消えぬ望郷がある。日本にしかないソーユが構成した生理的望郷がある。ワシントン市在留駐米・・・
宮本百合子
「一九二九年一月――二月」
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・・・を書いた、ピエール・ロチの筆致は実に細かで敏感で、長崎の蝉の声、夏の祭日の夜の賑い、夜店の通りを花と一緒に人力車に乗って来るお菊の姿の描写などは、日本人では或はああいう風な色彩的な雰囲気では書けないであろう日本的なものを活々と描出している。・・・
宮本百合子
「パァル・バックの作風その他」