せき‐にん【責任】例文一覧 30件

  1. ・・・甚太夫は平太郎の死に責任の感を免れなかったのか、彼もまた後見のために旅立ちたい旨を申し出でた。と同時に求馬と念友の約があった、津崎左近と云う侍も、同じく助太刀の儀を願い出した。綱利は奇特の事とあって、甚太夫の願は許したが、左近の云い分は取り・・・<芥川竜之介「或敵打の話」青空文庫>
  2. ・・・と云っても、勿論彼が、彼のした行為のあらゆる結果に、責任を持つ気でいた訳ではない。彼等が復讐の挙を果して以来、江戸中に仇討が流行した所で、それはもとより彼の良心と風馬牛なのが当然である。しかし、それにも関らず、彼の心からは、今までの春の温も・・・<芥川竜之介「或日の大石内蔵助」青空文庫>
  3. ・・・それゆえこの農場も、諸君全体の共有にして、諸君全体がこの土地に責任を感じ、助け合って、その生産を計るよう仕向けていってもらいたいと願うのです。 単に利害勘定からいっても、私の父がこの土地に投入した資金と、その後の維持、改良、納税のために・・・<有島武郎「小作人への告別」青空文庫>
  4. ・・・ブルジョアの勢いが失墜して、第四階級者が人間生活の責任者として自覚してきた場合に、クロポトキン、マルクス、レーニンらの思想が、その自覚の発展に対して決して障碍にならないばかりでなく、唯一の指南車でありうると誰がいいきることができるか。今は所・・・<有島武郎「片信」青空文庫>
  5. ・・・一体歌人にしろ小説家にしろ、すべて文学者といわれる階級に属する人間は無責任なものだ。何を書いても書いたことに責任は負わない。待てよ、これは、何日か君から聞いた議論だったね。A どうだか。B どうだかって、たしかに言ったよ。文芸上の作・・・<石川啄木「一利己主義者と友人との対話」青空文庫>
  6. ・・・今にはじめぬことながら、ほとんどわが国の上流社会全体の喜憂に関すべき、この大いなる責任を荷える身の、あたかも晩餐の筵に望みたるごとく、平然としてひややかなること、おそらく渠のごときはまれなるべし。助手三人と、立ち会いの医博士一人と、別に赤十・・・<泉鏡花「外科室」青空文庫>
  7. ・・・もう、人を頼まず、自分が自分でその場に全責任をしょうよりほかはない。 こうなると、自分に最も手近な家から探ぐって行かなければならない。で、僕は妻に手紙を書き、家の物を質に入れて某の金子を調達せよと言ってやった。質入れをすると言っても、僕・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  8. ・・・丁度その頃、或る処で鴎外に会った時、それとなく噂の真否を尋ねると、なかなかソンナわけには行かないよ、傍観者は直ぐ何でも改革出来るように思うが、責任の位置に坐って見ると物置一つだって歴史があるから容易に打壊す事は出来ない、改革に焦ったなら一日・・・<内田魯庵「鴎外博士の追憶」青空文庫>
  9. ・・・もし私に金がたくさんあって、地位があって、責任が少くして、それで大事業ができたところが何でもない。たとい事業は小さくても、これらのすべての反対に打ち勝つことによって、それで後世の人が私によって大いに利益を得るにいたるのである。種々の不都合、・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  10. ・・・しかし世の中には子供に対して責任感の薄い母も多い。が、そういう者は例外として、真に子供の為めに尽した母に対してはその子供は永久にその愛を忘れる事が出来ない。そして、子供は生長して社会に立つようになっても、母から云い含められた教訓を思えば、如・・・<小川未明「愛に就ての問題」青空文庫>
  11. ・・・また、べつの親戚の娘は、女学校の入学試験に落第したのは、親戚に私のような悪評嘖々たる人間がいるからであると言って、私に責任を問うて来た。ある大家が私の作品を人間冒涜の文学であり、いやらしいと言ったという噂が伝わった時、私は宿屋に泊っても変名・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  12. ・・・ そんな責任は俺にはないはずだ。万事は君が社と交渉していたのじゃないか……それをどこまでも白ばくれて、作家風々とか言って、万事はお他人任せといった顔して……それほどならばなぜ最初から素直に友人に打明けて、会のことを頼まないのか? 君はいつも・・・<葛西善蔵「遁走」青空文庫>
  13. ・・・ しかしかかる評価とは、かく煙を吐く浅間山は雄大であるとか、すだく虫は可憐であるとかいう評価と同じく、自然的事実に対する評価であって、その責任を問う道徳的評価の名に価するであろうか。ある人格はかく意志決定するということはその人格の必然で・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  14. ・・・ ここには、内地に於けるような、やかましい法律が存在していないことを彼等は喜んだ。責任を問われる心配がない××××と××は、兵士達にある野蛮な快味を与える。そして彼等を勇敢にするのだった。 武器の押収を命じられていることは、殆んど彼・・・<黒島伝治「パルチザン・ウォルコフ」青空文庫>
  15. ・・・班の責任者が、「中山さんのお母さんです。中山さんはとう/\今度市ヶ谷に廻ってしまったんです。」 といって、紹介した。 中山のお母さんは少しモジ/\していた。 私は自分の娘が監獄にはいったからといって、救援会にノコ/\やっ・・・<小林多喜二「疵」青空文庫>
  16. ・・・近所の人達は、親の責任を果さないと云って、悪く云います。中には、世間並の交際などは出来ない者として噂する者さえありました。バニカンタは、何不自由ない暮をし、毎日二度ずつも魚のカレーを食べられる程だったので、彼を憎んでいる者が、決して無いでは・・・<著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子「唖娘スバー」青空文庫>
  17. ・・・ 責任が重いんだぜ。わからないかね。一日一日、責任が重くなっているんだぜ。もっと、まともに苦しもうよ。まともに生き切る努力をしようぜ。明日の生活の計画よりは、きょうの没我のパッションが大事です。戦地に行った人たちの事を考えろ。正直はいつ・・・<太宰治「或る忠告」青空文庫>
  18. ・・・無論記事の全責任は記者すなわち著者にあることが特に断ってある。 一体人の談話を聞いて正当にこれを伝えるという事は、それが精密な科学上の定理や方則でない限り、厳密に云えばほとんど不可能なほど困難な事である。たとえ言葉だけは精密に書き留めて・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  19. ・・・道太はあの時病躯をわざわざそのために運んできて、その翌日あの大地震があったのだが、纏めていった姪の縁談が、双方所思ちがいでごたごたしていて、その中へ入る日になると、物質的にもずいぶん重い責任を背負わされることになるわけであった。それを解決し・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  20. ・・・いわゆる責任ある地位に立って、慎重なる態度を以て国政を執る方々である。当路に立てば処士横議はたしかに厄介なものであろう。仕事をするには邪魔も払いたくなるはず。統一統一と目ざす鼻先に、謀叛の禁物は知れたことである。老人の※には、花火線香も爆烈・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  21. ・・・ ここにおいて評家の責任が起る。評家はまず世間と作家とに向って文学はいかなる者ぞと云う解決を与えねばならん。文学上の述作を批判するにあたって批判すべき条項を明かに備えねばならぬ。あたかも中学及び高等学校の規定が何と何と、これこれとを修め・・・<夏目漱石「作物の批評」青空文庫>
  22. ・・・それによつてアメリカ人は、世界大戦の責任者をカイゼルとニイチェとの罪に帰した。 日本に於けるニイチェの影響は、しかしながら皆無と言ふ方が当つて居る。日本の詩人で、多少でもニイチェの影響を受けたと思はれる人は、過去にも現在にも一人も居ない・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  23. ・・・ ――手前は看守長だと言うんなら、手前は言った言葉に対して責任を持つだろうな。 ――もちろんだ。 ――手前は地震が何のことなく無事に終るということが、あらかじめ分ってたと言ったな。 ――言ったよ。 ――手前は地震学を誰か・・・<葉山嘉樹「牢獄の半日」青空文庫>
  24. ・・・啻に自身の不利のみならず、男子の醜行より生ずる直接間接の影響は、延て子孫の不幸を醸し一家滅亡の禍根にこそあれば、家の主婦たる責任ある者は、自身の為め自家の為め、飽くまでも権利を主張して配偶者の乱暴狼藉を制止せざる可らず。吾々の勧告する所なり・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  25. ・・・何にしろ相手があるのだから責任が重いように思われて張合があった。判者が外の人であったら、初から、かぐや姫とつれだって月宮に昇るとか、あるいは人も家もなき深山の絶頂に突っ立って、乱れ髪を風に吹かせながら月を眺めて居たというような、凄い趣向を考・・・<正岡子規「句合の月」青空文庫>
  26. ・・・そして私はその責任を負って軍法会議にかかりまた銃殺されようと思います。」特務曹長「曹長、よく云って呉れた。貴様だけは殺さない。おれもきっと一緒に行くぞ。十の生命の代りに二人の命を投げ出そう。よし。さあやろう。集まれっ。気を付けっ。右ぃお・・・<宮沢賢治「饑餓陣営」青空文庫>
  27. ・・・真に人間の心と体とが暖り合う家庭を破壊しながら、あらゆる社会的困難が発生すると、女子はすぐ家庭へ帰れるかのように責任回避して語られる。けれども、私たちの現実は、どうであろう。私たちに、もし帰る家庭があるならば、それこそ私たち自身の社会的な努・・・<宮本百合子「合図の旗」青空文庫>
  28. ・・・借家人の為ることは家主の責任である。サアベルが強くて物が言えないようなら、サアベルなんぞに始から家を貸さないが好い。声はいよいよ高くなる。薄井の爺さんにも聞せようとするのである。 石田は花壇の前に棒のように立って、しゃべる女の方へ真向に・・・<森鴎外「鶏」青空文庫>
  29. ・・・ 高田は栖方を紹介した責任を感じて詫びる風に、梶について掲っては来なかった。梶も、ともすると沈もうとする自分が怪しまれて来るのだった。「だって君、あの青年は狂人に見えるよ。またそうかも知れないが、とにかく、もし狂人に見えなかったなら・・・<横光利一「微笑」青空文庫>
  30. ・・・しかもそれが、その運命に対しては無限の責任と恐ろしさとを感じている自分の子供なのです。不断に涙をもって接吻しつづけても愛したりない自分の子供なのです。極度に敬虔なるべき者に対して私は極度に軽率にふるまいました。羞ずかしいどころではありません・・・<和辻哲郎「ある思想家の手紙」青空文庫>