せん‐い〔‐ヰ〕【繊維】例文一覧 26件

  1. ・・・ と、何かさも不平に堪えず、向腹を立てたように言いながら、大出刃の尖で、繊維を掬って、一角のごとく、薄くねっとりと肉を剥がすのが、――遠洋漁業会社と記した、まだ油の新しい、黄色い長提灯の影にひくひくと動く。 その紫がかった黒いのを、・・・<泉鏡花「露肆」青空文庫>
  2. ・・・この縞はたぶん紙を漉く時に繊維を沈着させる簾の痕跡であろうが、裏側の荒い縞は何だか分らなかった。 指頭大の穴が三つばかり明いて、その周囲から喰み出した繊維がその穴を塞ごうとして手を延ばしていた。 そんな事はどうでもよいが、私の眼につ・・・<寺田寅彦「浅草紙」青空文庫>
  3. ・・・その先端の綿の繊維を少しばかり引き出してそれを糸車の紡錘の針の先端に巻きつけておいて、右手で車の取っ手を適当な速度で回すと、つむの針が急速度で回転して綿の繊維の束に撚りをかける。撚りをかけながら左の手を引き退けて行くと、見る見る指頭につまん・・・<寺田寅彦「糸車」青空文庫>
  4. ・・・これにはきっと特別な細胞や繊維の特異性があるに相違ないが、ちょっとした動物学の書物などには、こうしたいちばんわれらの知りたいようなおもしろいことが書いてないようである。 主人公のバック氏が傘蛇に襲われ上着を脱いでかぶせて取り押える場面が・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  5. ・・・手に取って見ると、白く柔らかく、少しの粘りと臭気のある繊維が、五葉の星形の弁の縁辺から放射し分岐して細かい網のように広がっている。つぼんでいるのを無理に指先でほごして開かせようとしても、この白い繊維は縮れ毛のように巻き縮んでいてなかなか思う・・・<寺田寅彦「からすうりの花と蛾」青空文庫>
  6. ・・・手に取って見ると、白く柔らかく、少しの粘りと臭気のある繊維が、五葉の星形の弁の縁辺から放射し分岐して細かい網のように拡がっている。莟んでいるのを無理に指先でほごして開かせようとしても、この白い繊維は縮れ毛のように捲き縮んでいてなかなか思うよ・・・<寺田寅彦「烏瓜の花と蛾」青空文庫>
  7. ・・・そうしてこの線を組織するきわめて微細な繊維のようになった自分の「銀座線」とでもいったようなものがあり、これが昔のの中の銀座の夢につながっているのである。このの中では銀座というものが印象的にはかなり重要な部分を占めていた、それの影響が後年の―・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  8. ・・・蕈の類かと思って二つに割ってみたら何か草食獣の糞らしく中はほとんど植物の繊維ばかりでつまっている。同じようなのでまた直径が一倍半くらい大きいのがそろって集団をなしている。 この二種の糞を拾って行って老測夫に鑑定してもらったらどちらもうさ・・・<寺田寅彦「小浅間」青空文庫>
  9.  昔ギリシアの哲学者ルクレチウスは窓からさしこむ日光の中に踊る塵埃を見て、分子説の元祖になったと伝えられている。このような微塵は通例有機質の繊維や鉱物質の土砂の破片から成り立っている。比重は無論空気に比べて著しく大きいが、そ・・・<寺田寅彦「塵埃と光」青空文庫>
  10. ・・・一方はただ不規則な乾燥したそして簡単な繊維の集合か、あるいは不規則な凹凸のある無晶体の塊であるのに、他方は複雑に、しかも規則正しい細胞の有機的な団体である。美しいものと、これに似た美しくないものとの差別には、いつでもこのような、人間普通の感・・・<寺田寅彦「病室の花」青空文庫>
  11. ・・・袋の両端から少しずつ虫を傷つけないように注意しながら切って行った。袋の繊維はなかなか強靱であるので鈍い鋏の刃はしばしば切り損じて上すべりをした。やっと取り出した虫はかなり大きなものであった、紫黒色の肌がはち切れそうに肥っていて、大きな貪欲そ・・・<寺田寅彦「簔虫と蜘蛛」青空文庫>
  12. ・・・この響き、この群集の中に二年住んでいたら吾が神経の繊維もついには鍋の中の麩海苔のごとくべとべとになるだろうとマクス・ノルダウの退化論を今さらのごとく大真理と思う折さえあった。 しかも余は他の日本人のごとく紹介状を持って世話になりに行く宛・・・<夏目漱石「倫敦塔」青空文庫>
  13. ・・・いまはすっかり青ぞらに変ったその天頂から四方の青白い天末までいちめんはられたインドラのスペクトル製の網、その繊維は蜘蛛のより細く、その組織は菌糸より緻密に、透明清澄で黄金でまた青く幾億互に交錯し光って顫えて燃えました。「ごらん、そら、風・・・<宮沢賢治「インドラの網」青空文庫>
  14. ・・・日本においては、繊維産業に働く女の子の生活と意識の水準がどの辺にあるかということが、必ずみられなければなりません。吉田首相がどんなに綺麗な白足袋をはいているかということではなくて、続々と失業させられている労働者の食べられるもの、着ていられる・・・<宮本百合子「新しい抵抗について」青空文庫>
  15. ・・・昭和四年においてさえ男工一〇〇に対して女工の数は一一五・七を示し、大部分が繊維工業に分布されている。これは、日本が近代工業国として持っている歴史的な独特性である。故細井和喜蔵氏によって著わされた「女工哀史」はそういう特性をもった日本の若い無・・・<宮本百合子「新しい婦人の職場と任務」青空文庫>
  16. ・・・紡織は、イギリスで蒸気の力で紡績機械を運転することを発見して産業革命があって後、繊維産業というものが世界中ですっかり変ってしまった。 今日の紡績工場は耳が聾になるほどうるさい。何千という錘が絶え間なく廻っている。そこに十四五から、七八く・・・<宮本百合子「衣服と婦人の生活」青空文庫>
  17. ・・・例えば女の人口のうち、あれだけ多くを占める繊維工業の若い十四五から二十歳までの勤労女性の生活はどうでしょう。倉敷には有名な大原コレクションがありますが、この倉敷で文化講演会があっても、総同盟あたりが締めつけにしている工場では、工場というとこ・・・<宮本百合子「社会と人間の成長」青空文庫>
  18. ・・・社会がその発展の頂上に近づいた十九世紀になって、ルネッサンス以後十八世紀になってはっきり方向を定めた人間解放の問題が具体化して来て、特にイギリスではどこよりも早く蒸気機関の利用による産業革命が行われ、繊維産業が非常に発達した。イギリスの婦人・・・<宮本百合子「女性の歴史」青空文庫>
  19. ・・・があるとすると、その地区に住んでいる繊維の労働者もこれを利用することが出来る。ただ、現在の五ヵ年計画による社会主義都市の建設は、大きな工場を中心として「クラブ」や食堂、病院、学校などを建設して行くから自然産別に於て統一される。 労働者ク・・・<宮本百合子「ソヴェトの「労働者クラブ」」青空文庫>
  20. ・・・松岡駒吉氏たちは、宝塚会談で繊維労働者の民主的な生活への見とおしを売りわたして、今日北白川宮邸に住む身となっている。日本経済復興をだしに武器製造から繊維の儲けに移った業者と腹を合わせた社会党の政府が、この課題を人民の目の前でどうとりさばくか・・・<宮本百合子「その檻をひらけ」青空文庫>
  21. ・・・ 海をへだてたアメリカでは、丁度時を同じくして全米繊維の大罷業が七十二万人の労働者をふくんではじまっている。 三日の夕方、東交代表河野争議部長が、下唇を突出し気味に背中を堅くして椅子にかけている山下局長に向って整理案撤回要求書を差し・・・<宮本百合子「電車の見えない電車通り」青空文庫>
  22. ・・・の抒情的作風からはやい歩調で成長してきて、取材の範囲をひろめながら日本の繊維産業とそこに使役されている婦人の労働についてはっきり労働階級の立場から書きはじめている。彼女の筆致はまだ粗く、人間像の内面へまで深く迫った形象化に不足する場合もある・・・<宮本百合子「婦人作家」青空文庫>
  23. ・・・今日日本で婦人労働者の数は全労働人員の四割七分を占めているが、その大部分は繊維工で、教育程度は平均僅かに小学四年です。婦人の高等教育機関もあるが、それを受け得る者は極く少数のブルジョアに過ぎない。尨大な繊維女工の群はブルジョア日本の特質をな・・・<宮本百合子「婦人作家の「不振」とその社会的原因」青空文庫>
  24. ・・・日本では婦人労働者がその八割六分を占めている繊維工業者らは、実物供与、寄宿舎、光熱、被服、賄等を会社の手に独占して更にそこから儲けている。而も一九二五年、六百二十軒の工場で、宿舎に雨戸のあるのが二百四十九軒。雨戸のないのが三百七十一軒という・・・<宮本百合子「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」青空文庫>
  25. ・・・いわゆる労働問題をおこしたり、日本の労働者の賃銀は世界水準から半奴隷的賃銀とされていること、婦人の労働がさらにその半分の賃銀しか得ていないからこそ、明治以来日本の繊維産業は世界市場で資本家のために利潤をあげてきているというような事実をあから・・・<宮本百合子「平和への荷役」青空文庫>
  26. ・・・それとともに、工業はおくれていて、資本主義国家となるためには、辛うじて、繊維軽工業にたよるしかなかった。天然資源にも乏しい。明治政府の本質というものは封建的な地主と軽工業に基礎を置いた非常に薄弱な資本家とによって組立てられていたものであって・・・<宮本百合子「私たちの建設」青空文庫>