そろ‐そろ例文一覧 32件

  1. ・・・「もうそろそろ時刻になるな、相手はあんな魔法使だし、御嬢さんはまだ子供だから、余程運が好くないと、――」 遠藤の言葉が終らない内に、もう魔法が始まるのでしょう。今まで明るかった二階の窓は、急にまっ暗になってしまいました。と同時に不思・・・<芥川竜之介「アグニの神」青空文庫>
  2. ・・・朝ごとに河面は霧が濃くなってうす寒くさえ思われる時節となりましたので、気の早い一人の燕がもう帰ろうと言いだすと、他のもそうだと言うのでそろそろ南に向かって旅立ちを始めました。 ただやさしい形の葦となかのよくなった燕は帰ろうとはいたしませ・・・<有島武郎「燕と王子」青空文庫>
  3.  ずっと早く、まだ外が薄明るくもならないうちに、内じゅうが起きて明りを附けた。窓の外は、まだ青い夜の霧が立ち籠めている。その霧に、そろそろ近くなって来る朝の灰色の光が雑って来る。寒い。体じゅうが微かに顫える。目がいらいらする。無理に早く・・・<著:アルチバシェッフミハイル・ペトローヴィチ 訳:森鴎外「罪人」青空文庫>
  4. ・・・「――そろそろと歩行いて行き、ただ一番あとのものを助けるよう――」 途中から女の子に呼戻させておいて、媼巫女、その孫八爺さんに命ずるがごとくに云って――方角を教えた。 ずんぐりが一番あとだったのを、孫八が来て見出したとともに・・・<泉鏡花「神鷺之巻」青空文庫>
  5. ・・・省作もそろそろ起きねばならんでなお夜具の中でもさくさしている。すぐ起きる了簡ではあるが、なかなかすぐとは起きられない。肩が痛む腰が痛む、手の節足の節共にきやきやして痛い。どうもえらいくたぶれようだ。なあに起きりゃなおると、省作は自分で自分を・・・<伊藤左千夫「隣の嫁」青空文庫>
  6. ・・・「この位稽古しましたら、そろそろ人間の猟をしに出掛けられますでしょうね」と、笑談のようにこの男に言ったら、この場合に適当だろうと、女は考えたが、手よりは声の方が余計に顫いそうなので、そんな事を言うのは止しにした。そこで金を払って、礼を云・・・<著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外「女の決闘」青空文庫>
  7. ・・・浜子は私めずらしさにももうそろそろ飽きてきた時だったのでしょう。夜、父が寄席へ出かけた留守中、浜子は新次からお午や榎の夜店見物をせがまれると、留守番がないからと言ってちらりと私の顔を見る。そんな時、わい夜店は眠うなるさかい嫌やと、心にもない・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  8. ・・・しかし吉田は誰もみな一日の仕事をすましてそろそろ寝ようとする今頃になって、半里もある田舎道を医者へ行って来てくれとか、六十も越してしまった母親に寝ずについていてくれとか言うことは言い出しにくかった。またそれを思い切って頼む段になると、吉田は・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  9. ・・・いやそろそろ政略が要るようになった。妙だぞ。妙だぞ。ようやく無事に苦しみかけたところへ、いい慰みが沸いて来た。充分うまくやって見ようぞ。ここがおれの技倆だ。はて事が面白くなって来たな。 光代は高がひいひいたもれ。ただ一撃ちに羽翼締めだ。・・・<川上眉山「書記官」青空文庫>
  10. ・・・ さア初めろと自分の急き立つるので、そろそろ読み上げる事になった。自分がそばで聴くとは思いがけない事ゆえ、大いに恐縮している者もある。それもそのはずで、読む手紙も読む手紙もことごとく長崎より横須賀より、または品川よりなど、初めからそんな・・・<国木田独歩「遺言」青空文庫>
  11. ・・・そうするとまたそろそろと勇気が出て来て、家を出てから一里足らずは笛吹川の川添を上って、それから右手の嶺通りの腰をだんだんと「なぞえ」に上りきれば、そこが甲州武州の境で、それから東北へと走っている嶺を伝わって下って行けば、ついには一つの流に会・・・<幸田露伴「雁坂越」青空文庫>
  12. ・・・そして、好きな裁縫や編み物のような、静かな手芸に飽きることを知らないような娘であった。そろそろ女の洋服がはやって来て、女学校通いの娘たちが靴だ帽子だと新規な風俗をめずらしがるころには、末子も紺地の上着に襟のところだけ紫の刺繍のしてある質素な・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  13. ・・・同情する自分と同情される他者との矛盾が、死ぬか生きるかの境まで来ると、そろそろ本体を暴露して来はしないか。まず多くの場合に自分が生きる。よっぽど濃密の関係で自分と他者と転倒しているくらいの場合に、いわば病的に自分が死ぬる。または極局身後の不・・・<島村抱月「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」青空文庫>
  14. ・・・と、初やにお菜の指図をして、「これから当分は何だかさびしいでしょうね。まったく不意にこんなことになったのですよ」と、そろそろ何か言いだしそうであったから、自分はすぐ、「あの豆腐屋の親爺さんは、どういう気であんなに髯を生やしているんで・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  15. ・・・数学界にも、そろそろこの宗教心がはいりこんで来ている。これは、絶対に排撃しなければならない。老博士は、この伝統の打破に立ったわけであります。」意気いよいよあがった。みんなは、一向に面白くない。末弟ひとり、まさにその老博士の如くふるいたって、・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  16. ・・・こういう物の運動に関係した問題に触れ初めると同時に、今までそっとしておいた力学の急所がそろそろ痛みを感ずるようになって来た。ロレンツのごとき優れた老大家は疾くからこの問題に手を附けて、色々な矛盾の痛みを局部的の手術で治療しようとして骨折って・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  17. ・・・だいぶ長くなったから、もうそろそろ御輿をあげるとしよう」「お仕事はもうおしまいですか。何だかちょこちょことやって、もうそれでいいの」「まあね」「まだ何か食べたいものはないんですか」「もう食べあきた。どこへ行っても同じものばか・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  18. ・・・もうシゲちゃんもそろそろ、ねェ」 三吉はくらくなってきた足もとをみていた。彼女は紙巻工であった深水の嫁さんの同僚で、深水の結婚式のとき、てつだいにきていた彼女を、三吉は顔だけみたのである。「どうだあの子、いままで男なんかあったか?」・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  19. ・・・ 鶯の声も既に老い、そろそろ桜がさきかけるころ、わたくしはやっと病褥を出たが、医者から転地療養の勧告を受け、学年試験もそのまま打捨て、父につれられて小田原の町はずれにあった足柄病院へ行く事になった。(東京で治療を受けていた医者は神田神保・・・<永井荷風「十六、七のころ」青空文庫>
  20. ・・・こんな時はなるべく早く帰る方が得策だ、長座をすればするほど失敗するばかりだと、そろそろ、尻を立てかけると「あなた、顔の色が大変悪いようですがどうかなさりゃしませんか」と御母さんが逆捻を喰わせる。「髪を御刈りになると好いのね、あんまり・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  21. ・・・ 私はひどく酔っ払ったような気持だった。私の心臓は私よりも慌てていた。ひどく殴りつけられた後のように、頭や、手足の関節が痛かった。 私はそろそろ近づいた。一歩々々臭気が甚しく鼻を打った。矢っ張りそれは死体だった。そして極めて微かに吐・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  22. ・・・しかし、火がついて、下からそろそろ熱くなって来ると、ようやく、これは一大事というように騒ぎはじめるのである。しかし、もう追っつかない。そういうところが、どうも自分に似たところがあるので、私はドンコが好きで、棲家をも「鈍魚庵」とした次第である・・・<火野葦平「ゲテ魚好き」青空文庫>
  23. ・・・「さアそろそろ始まッたぞ。今夜は紋日でなくッて、紛紜日とでも言うんだろう。あッちでも始まればこッちでも始まる。酉の市は明後日でござい。さア負けたア負けたア、大負けにまけたアまけたア」と、西宮は理も分らぬことを言い、わざとらしく高く笑うと・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  24. ・・・そのうちそろそろ我慢がし切れなくなった。余り人を馬鹿にしているじゃないか。オオビュルナンはどこかにベルがありそうなものだと、壁を見廻した。 この時下女が客間に来た。頬っぺたが前に見た時より赤くなっていて、表情が前に見た時より馬鹿らしく見・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  25. ・・・自分も非常に嬉しかったから、そろそろと甲板へ出た。甲板は人だらけだ。前には九州の青い山が手の届くほど近くにある。その山の緑が美しいと来たら、今まで兀山ばっかり見て居た目には、日本の山は緑青で塗ったのかと思われた。ここで検疫があるのでこの夜は・・・<正岡子規「病」青空文庫>
  26. ・・・「そろそろど押えろよ。そろそろど。」と言いながら一郎は一ぴきのくつわについた札のところをしっかり押えました。嘉助と三郎がもう一匹を押えようとそばへ寄りますと、馬はまるでおどろいたようにどてへ沿って一目散に南のほうへ走ってしまいました。・・・<宮沢賢治「風の又三郎」青空文庫>
  27. ・・・ 永い間徐行し、シグナルの赤や緑の色が見える構内で一度とまり、そろそろ列車はウラジヴォストクのプラットフォームへ入った。空の荷物運搬車が凍ったコンクリートの上にある。二人か三人の駅員が、眠げにカンテラをふって歩いて来た。 ――誰も出・・・<宮本百合子「新しきシベリアを横切る」青空文庫>
  28. ・・・あるいはまた急に踏まれた安価にまけて、買い手を呼び止める、買い手はそろそろ逃げかけたので、『よろしい、お持ちなされ!』 かれこれするうちに辻は次第に人が散って、日中の鐘が鳴ると、遠くから来た者はみな旅宿に入ってしまった。 シュー・・・<著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩「糸くず」青空文庫>
  29. ・・・茶漬でも食べて、そろそろ東光院へ往かずばなるまい。お母あさまにも申し上げてくれ」 武士はいざというときには飽食はしない。しかしまた空腹で大切なことに取りかかることもない。長十郎は実際ちょっと寝ようと思ったのだが、覚えず気持よく寝過し、午・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  30. ・・・何んだか、そろそろおかしな話になって来たが、とにかく、お前が病気をしたお蔭で、俺ももう看護婦の免状位は貰えそうになって来たし、不幸ということがすっかり分らなくなって来たし、こんな有り難いことはそうやたらにあるもんじゃない。お前も、ゆっくり寝・・・<横光利一「花園の思想」青空文庫>