だ‐えん〔‐ヱン〕【×楕円/×橢円】例文一覧 20件

  1. ・・・鼠色の唐艸や十六菊の中に朱の印を押した十円札は不思議にも美しい紙幣である。楕円形の中の肖像も愚鈍の相は帯びているにもせよ、ふだん思っていたほど俗悪ではない。裏も、――品の好い緑に茶を配した裏は表よりも一層見事である。これほど手垢さえつかずに・・・<芥川竜之介「十円札」青空文庫>
  2. ・・・月はさやかに照り、これらの光景を朦朧たる楕円形のうちに描きだして、田園詩の一節のように浮かべている。自分たちもこの画中の人に加わって欄に倚って月を眺めていると、月は緩るやかに流るる水面に澄んで映っている。羽虫が水を摶つごとに細紋起きてしばら・・・<国木田独歩「武蔵野」青空文庫>
  3. ・・・地球の軌道は楕円の環をなしていると君達は思うだろうが大ちがいサ、実は月が地球のまわりを環をなしながら到底は大空間に有則螺線を描ていると同じ事に、地球も太陽に従ッて有則螺線を大空間に描いているのサ。即ち自転も螺旋サ。又一年の動きも螺旋サ。有則・・・<幸田露伴「ねじくり博士」青空文庫>
  4. ・・・発散級数の和でも、楕円函数でも、大いに研究するんだね。」私は、やや得意であった。言い終って、少年の方を、ちらと伺って見ると、少年は、私のお説教を半分も聞いていなかったらしく、無心に、ごはんを食べていた。「どうかね。わかったかね。」私は、しつ・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  5. ・・・例えばファゴットの管の上端の楕円形が大きく写ると同時にこの木管楽器のメロディーが忽然として他の音の波の上に抜け出て響いて来るのである。こういうことは作曲者かあるいは指揮者を同伴して演奏会へ行っても容易に得られない無言の解説である。カルメンの・・・<寺田寅彦「映画雑感(5[#「5」はローマ数字、1-13-25])」青空文庫>
  6. ・・・緑色の楕円形をした食えない部分があってその頭にこれと同じくらいの大きさで美しい紅色をした甘い団塊が附着している。噛み破ると透明な粘液の糸を引く。これも国を離れて以来再びめぐり逢わないものの一つである。 旧城のお濠の菱の実も今の自分には珍・・・<寺田寅彦「郷土的味覚」青空文庫>
  7. ・・・それからこの颱風の中心は土佐の東端沿岸の山づたいに徳島の方へ越えた後に大阪湾をその楕円の長軸に沿うて縦断して大阪附近に上陸し、そこに用意されていた数々の脆弱な人工物を薙倒した上で更に京都の附近を見舞って暴れ廻りながら琵琶湖上に出た。その頃か・・・<寺田寅彦「颱風雑俎」青空文庫>
  8. ・・・もう少し詳しく水に浮かんでいる木切れか何かの運動を注意していると、波が一つ通るごとに、楕円形の輪を描いている事がわかります。これは水の表面に限らず、底のほうでも同様ですが、ただ底へ行くほどこの楕円形が平たくまた小さくなり、いよいよ底の所では・・・<寺田寅彦「夏の小半日」青空文庫>
  9. ・・・ 円筒形の上の断面を楕円形に表わして、底面の方は直線でかいてしまう事が流行するようである。こういう流行は永くはつづくまい。「天然」と絵具だけからは絵は生れないし、「自己」と絵具ばかりからも絵は生れない。自己と天然と真剣に取組み合・・・<寺田寅彦「二科会展覧会雑感」青空文庫>
  10. ・・・むかし目に見馴れた橢円形の黄いろい真桑瓜は、今日ではいずこの水菓子屋にも殆ど見られないものとなった。黄いろい皮の面に薄緑の筋が六、七本ついているその形は、浮世絵師の描いた狂歌の摺物にその痕を留めるばかり。西瓜もそのころには暗碧の皮の黒びかり・・・<永井荷風「西瓜」青空文庫>
  11. ・・・ これから病人や死体が、そこへ入るにしても、空気は、楕円形の三尺に二尺位の、ガットの穴から忍び込むより仕方がなかった。 そんな小さな穴からは、丈夫な生きた人間が「一人」で、縄梯子を伝って降りるより外に、方法は無かった。 病人を板・・・<葉山嘉樹「労働者の居ない船」青空文庫>
  12. ・・・ それはひる学校で見たあの図よりはずうっと小さかったのですがその日と時間に合せて盤をまわすと、そのとき出ているそらがそのまま楕円形のなかにめぐってあらわれるようになって居りやはりそのまん中には上から下へかけて銀河がぼうとけむったような帯・・・<宮沢賢治「銀河鉄道の夜」青空文庫>
  13. ・・・…… 由子は、今も鮮やかにぽっくり珠の落ちた後の台の形を目に泛べることが出来た。楕円形の珠なりにぎざぎざした台の手が出ているのが、急に支える何ものも無くなった。それでもぎざぎざは頑固にぎざぎざしている。掴んでいるのは空だ。空っぽの囲りで・・・<宮本百合子「毛の指環」青空文庫>
  14. ・・・ 寝台の横には楕円形のテーブルが置いてある。首がガクつくのをガーゼで巻いてある真鍮の呼鈴、一緒に、アスパラガスに似た鉢植が緑の細かい葉をふっさり垂れていた。 日本でも猫が葉っぱをたべたりするのかしらん。―― 床に黄色い透明な液体・・・<宮本百合子「子供・子供・子供のモスクワ」青空文庫>
  15. ・・・金塗の椅子やテーブルや鏡がそこの室内にはある。楕円形の大テーブルに、ソヴェト内地旅行案内のパンフレットや対外文化連絡協会の週刊雑誌などがきちんとならべてあった。 СССР地図を後にして一人のソヴェト的紳士がかけている。室の真ん中にタイプ・・・<宮本百合子「スモーリヌイに翻る赤旗」青空文庫>
  16. ・・・先に小さい楕円形 紅茶こしのような金のたまがついて居る。それをたまの方から嚥み下さなければならない。十二指腸から胆汁をとる療法だがこのゾンドなるものをかけられる時は一種悲しき芸当の感じだ。フセワロード・イワノフが曲芸師であった時嚥んだ剣より・・・<宮本百合子「一九二九年一月――二月」青空文庫>
  17. ・・・指紋が綺麗に流れていて、その間に小さい島のように一つだけ楕円形に光ったところが残っている。 おや、こんなものが出来たと心付いて眺めた時より、おや消えていると思ったときの方が何だかびっくりした。薬を教えてくれた人にお礼がてら魚の目のことを・・・<宮本百合子「鼠と鳩麦」青空文庫>
  18. ・・・ 春慶塗の、楕円形をしている卓の向うに、翁はにこにこした顔をして、椅子に倚り掛かっていたが、花房に「あの病人を御覧」と云って、顔で方角を示した。 寝台の据えてあるあたりの畳の上に、四十余りのお上さんと、二十ばかりの青年とが据わってい・・・<森鴎外「カズイスチカ」青空文庫>
  19. ・・・ そこへ雪が橢円形のニッケル盆に香茶の道具を載せて持って来た。そして小さい卓を煖炉の前へ運んで、その上に盆を置いて、綾小路の方を見ぬようにしてちょいと見て、そっと部屋を出て行った。何か言われはしないだろうか。言えば又恥かしいような事を言・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>
  20. ・・・通例はその穴が椎の実形の、横に長い楕円形になっていて、幾分眼の形を写そうとした努力のあることを思わせるが、しかしそれ以外には眼を写実的に現わそうとした点は少しもない。時にはその穴がまん丸であることさえもある。しかしそういう無雑作な穴が二つ並・・・<和辻哲郎「人物埴輪の眼」青空文庫>