つたえ〔つたへ〕【伝え】例文一覧 32件

  1. ・・・彼の復讐の挙も、彼の同志も、最後にまた彼自身も、多分このまま、勝手な賞讃の声と共に、後代まで伝えられる事であろう。――こう云う不快な事実と向いあいながら、彼は火の気のうすくなった火鉢に手をかざすと、伝右衛門の眼をさけて、情なさそうにため息を・・・<芥川竜之介「或日の大石内蔵助」青空文庫>
  2. ・・・ 内儀さんがランプを座敷に運んで行ったが、帰って来ると父からの言いつけを彼に伝えた。それは彼が小作人の一人一人を招いて、その口から監督に対する訴訟と、農場の規約に関する希望とを聞き取っておく役廻りで、昨夜寝る時に父が彼に命令した仕事だっ・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  3. ・・・ 象徴詩という言葉が、そのころ初めて日本の詩壇に伝えられた。私も「吾々の詩はこのままではいけぬ」とは漠然とながら思っていたが、しかしその新らしい輸入物に対しては「一時の借物」という感じがついて廻った。 そんならどうすればいいか? そ・・・<石川啄木「弓町より」青空文庫>
  4. ・・・ 伝え聞く、摩耶山とうりてんのうじ夫人堂の御像は、その昔梁の武帝、女人の産に悩む者あるを憐み、仏母摩耶夫人の影像を造りて大功徳を修しけるを、空海上人入唐の時、我が朝に斎き帰りしものとよ。 知ることの浅く、尋ぬること怠るか、はたそれ詣・・・<泉鏡花「一景話題」青空文庫>
  5. ・・・彼の徳川時代の初期に於て、戦乱漸く跡を絶ち、武人一斉に太平に酔えるの時に当り、彼等が割合に内部の腐敗を伝えなかったのは、思うに将軍家を始めとして大名小名は勿論苟も相当の身分あるもの挙げて、茶事に遊ぶの風を奨励されたのが、大なる原因をなし・・・<伊藤左千夫「茶の湯の手帳」青空文庫>
  6. ・・・目的はピー砲台じゃ、その他の命令は出さんから、この川を出るが最後、個々の行動を取って進めという命令が、敵に悟られん様に、聨隊長からひそかに、口渡しで、僕等に伝えられ、僕等は今更電気に打たれた様に顫たんやが、その日の午後七時頃、いざと一同川を・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  7. ・・・ さらぬだに淡島屋の名は美くしい錦絵のような袋で広まっていたから、淡島屋の軽焼は江戸一だという評判が益々高くなって、大名高家の奥向きから近郷近在のものまで語り伝えてわざわざ馬喰町まで買いに来た。淡島屋のでなければ軽焼は風味も良くないし、・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  8. ・・・ 最近の新聞紙は、三山博士の子供が三人共家出をして苦しんでいるという事実を伝えている。その記事に依ると、本当の母親は小さいうちに死んでしまって、継母の手に育ったという。博士は三人の子供が三人共学問が嫌いで、性質が悪くて家出をしたように云・・・<小川未明「愛に就ての問題」青空文庫>
  9. ・・・場で絶命するという騒ぎの隙をねらって、腐り厩舎の腐り馬と嗤われていた馬が見習騎手の鞭にペタペタ尻をしばかれながらゴールインして単複二百円の配当、馬主も騎手も諦めて単式はほかの馬に投票していたという話が伝えられるくらいの番狂わせである。 ・・・<織田作之助「競馬」青空文庫>
  10. ・・・ 激しい車輪の響きが彼の身体に戦慄を伝えた。それははじめ荒々しく彼をやっつけたが、遂には得体の知れない感情を呼び起こした。涙が流れ出た。 響きは遂に消えてしまった。そのままの普段着で両親の家へ、急行に乗って、と彼は涙の中に決心してい・・・<梶井基次郎「過古」青空文庫>
  11. ・・・ この時わが胸を衝きて起こりし恐ろしき想いはとても貴嬢の解したまわぬ境なり、またいかでわが筆よくこれを貴嬢に伝え得んや。試みに想い候え、十蔵とは奸なる妻のために片目を失いし十蔵なり、妻なく子なく兄弟なく言葉少なく気重く心怪しき十蔵なり。・・・<国木田独歩「おとずれ」青空文庫>
  12. ・・・じ宗教的日本主義者として今日彼に共鳴するところの多い私が、私の目をもって見た日蓮の本質的性格と、特殊的相貌の把握とを、今の日本に生きつつある若き世代の青年たちに、活ける示唆と、役立つべき解釈とによって伝えたいと思うのである。    ・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  13. ・・・その海賊は、又、島の住民をも襲ったと云い伝えられている。かつて襲われたという家を私も二軒知っているが、そのいずれもが剛慾で人の持っているものを叩き落してでも自分が肥っていこうという家であったのを見ると、海賊というものにも、たゞ者を掠めとる一・・・<黒島伝治「海賊と遍路」青空文庫>
  14. ・・・のもあり、また滝へ直接にかかれぬものは、寺の傍の民家に頼んでその水を汲んで湯を立ててもらって浴する者もあるが、不思議に長病が治ったり、特に医者に分らぬ正体の不明な病気などは治るということであって、語り伝えた現の証拠はいくらでもある。君の病気・・・<幸田露伴「観画談」青空文庫>
  15. ・・・初生の人類より滴々血液を伝え来れる地球上譜※の一節である。近時諸種の訳書に比較して見よ。如何に其漢文に老けたる歟が分るではない乎。而して其著「理学鈎玄」は先生が哲学上の用語に就て非常の苦心を費したもので「革命前仏蘭西二世紀事」は其記事文の尤・・・<幸徳秋水「文士としての兆民先生」青空文庫>
  16. ・・・りぎり決着ありたけの執心をかきむしられ何の小春が、必ずと畳みかけてぬしからそもじへ口移しの酒が媒妁それなりけりの寝乱れ髪を口さがないが習いの土地なれば小春はお染の母を学んで風呂のあがり場から早くも聞き伝えた緊急動議あなたはやと千古不変万世不・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  17. ・・・私は太郎から聞いて来た返事を次郎に伝えて、いよいよ郷里のほうへ出発するように、そのしたくに取り掛からせることにした。「次郎ちゃん、番町の先生のところへも暇乞いに行って来るがいいぜ。」「そうだよ。」 私たちはこんな言葉をかわすよう・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  18. ・・・暮れて行く空や水や、ありやなしやの小島の影や、山や蜜柑畑や、森や家々や、目に見るものがことごとく、藤さんの白帆が私語く言葉を取り取りに自分に伝えているような気がする。 と、ふと思わぬところにもう一つ白帆がある。かなたの山の曲り角に、靄に・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  19. ・・・と私は、駈引きも小細工も何もせず、署長から言われた事をそのまま伝えて、「のう、圭吾も心得違いしたものだが、しかし、どんな人でも、いちどは魔がさすというか、魔がつくというか、妙な間違いを起したがるものだ。これは、ハシカのようなもので、人間の持・・・<太宰治「嘘」青空文庫>
  20. ・・・先ずこんなわけで、いつの間にかポルジイは真面目にドリスに結婚を申し込んだと云う噂が伝えられた。 これはひどく人の耳目を聳動した。尤もこれに驚かされたのは、ストロオガツセなる伯爵キルヒネツゲル家の邸の人々である。 邸あたりでは、人生一・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  21. ・・・ただ一つの逸話として伝えられているのは、彼が五歳の時に、父から一つの羅針盤を見せられた事がある、その時に、何ら直接に接触するもののない磁針が、見えざる力の作用で動くのを見て非常に強い印象を受けたという事である。その時の印象が彼の後年の仕事に・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  22. ・・・此の風習は伝えられて昭和の今日に及んでいる。公園は之がために年と共に俗了し、今は唯病樹の乱立する間に朽廃した旧時の堂宇と、取残された博覧会の建築物とを見るばかりとなった。わたくしをして言わしむれば、東京市現時の形勢より考えて、上野の公園地は・・・<永井荷風「上野」青空文庫>
  23. ・・・あるいは人間の機微に触れた内部の消息を伝えた作品を第一位に据えてもいい。あるいは平々淡々のうちに人を引き着ける垢抜けのした著述を推すもいい。猛烈なものでも、沈静なものでも、形式の整ったものでも、放縦にしてまとまらぬうちに面白味のあるものでも・・・<夏目漱石「作物の批評」青空文庫>
  24. ・・・前者はドイツ人がこれを伝え、後者はフランス人がこれを伝えたといい得るではなかろうか。<西田幾多郎「フランス哲学についての感想」青空文庫>
  25. ・・・扨又本章中、人を誹り偽を言う可らず、人の謗を伝え語る可らず云々は、固より当然のことにして、特に婦人に限らず男子に向ても警しむ可き所のものなれば、評論を略す。一 女は常に心遣ひして其身を堅く謹護べし。朝早く起き夜は遅く寝ね、昼は寝・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  26. ・・・ 世間では、私の号に就ていろんな臆説を伝えているが、実際は今云った通りなんだ。いや、「仕舞え!」と云って命令した時には、全く仕舞う時節が有るだろうと思ったね。――その解決が付けば、まずそのライフだけは収まりが付くんだから。で、私の身にと・・・<二葉亭四迷「予が半生の懺悔」青空文庫>
  27. ・・・一たびこれに接して畏敬の念を生じたる春岳はこれを聘せんとして侍臣をして命を伝えしめしも曙覧は辞して応ぜざりき。文を売りて米の乏しきを歎き、意外の報酬を得て思わず打ち笑みたる彼は、ここに至って名利を見ること門前のくろの糞のごとくなりき。臨むに・・・<正岡子規「曙覧の歌」青空文庫>
  28. ・・・一郎は早く仕度をして学校へ行ってみんなに又三郎のさようならを伝えたいと思って少しもどかしく思いながらいそいで家の中へ入りました。<宮沢賢治「風野又三郎」青空文庫>
  29. ・・・エログロ出版物を駆逐するために、警察力を使えということ、新しい取締法律をつくれという意見が伝えられました。しかし、猥褻罪を取締るためには、そのための法律がある。どうせ悪質な出版をする者はその時々の情勢によって猥褻にもなれば怪奇にもなるのであ・・・<宮本百合子「新しい抵抗について」青空文庫>
  30. ・・・森は田辺に着いたし、景一に面会して御旨を伝え、景一はまた赤松家の物頭井門亀右衛門と謀り、田辺城の妙庵丸櫓へ矢文を射掛け候。翌朝景一は森を斥候の中に交ぜて陣所を出だし遣り候。森は首尾よく城内に入り、幽斎公の御親書を得て、翌晩関東へ出立いたし候・・・<森鴎外「興津弥五右衛門の遺書」青空文庫>