てん‐すい【天水】例文一覧 4件

  1. ・・・それから麦酒樽の天水桶の上に乾し忘れたままの爪革だった。それから、往来の水たまりだった。それから、――あとは何だったにせよ、どこにも犬の影は見なかった。その代りに十二三の乞食が一人、二階の窓を見上げながら、寒そうに立っている姿が見えた。・・・<芥川竜之介「保吉の手帳から」青空文庫>
  2. ・・・見る見る歯医者の家の前を通り過ぎて、始終僕たちをからかう小僧のいる酒屋の天水桶に飛び乗って、そこでまたきりきり舞いをして桶のむこうに落ちたと思うと、今度は斜むこうの三軒長屋の格子窓の中ほどの所を、風に吹きつけられたようにかすめて通って、それ・・・<有島武郎「僕の帽子のお話」青空文庫>
  3. ・・・「もう、二階ばかり上の高い処に、海老屋の屋根の天水桶の雪の遠見ってのがありました。」「聞いても飛上りたいが、お妻さん、動悸が激しくって、動くと嘔きそうだ。下へもおりられないんだよ。恩に被るから、何とか一杯。」「おっしゃるな。すぐ・・・<泉鏡花「開扉一妖帖」青空文庫>
  4. ・・・「……君はひどく酔払っていたから分らないだろうがね、あの洲崎で君が天水桶へ踏みこんで濡鼠になった晩さ、……途中水道橋で乗替えの時だよ、僕はあそこの停留場のとこで君の肩につかまって、ほんとにおいおい声を出して泣いたんだぜ。それはいくら君と・・・<葛西善蔵「遁走」青空文庫>