てん‐らん【展覧】例文一覧 30件

  1.  いつぞや上野の博物館で、明治初期の文明に関する展覧会が開かれていた時の事である。ある曇った日の午後、私はその展覧会の各室を一々叮嚀に見て歩いて、ようやく当時の版画が陳列されている、最後の一室へはいった時、そこの硝子戸棚の前・・・<芥川竜之介「開化の良人」青空文庫>
  2.  ある雨の降る日の午後であった。私はある絵画展覧会場の一室で、小さな油絵を一枚発見した。発見――と云うと大袈裟だが、実際そう云っても差支えないほど、この画だけは思い切って彩光の悪い片隅に、それも恐しく貧弱な縁へはいって、忘れ・・・<芥川竜之介「沼地」青空文庫>
  3. ・・・思うにこの田中君のごときはすでに一種のタイプなのだから、神田本郷辺のバアやカッフェ、青年会館や音楽学校の音楽会兜屋や三会堂の展覧会などへ行くと、必ず二三人はこの連中が、傲然と俗衆を睥睨している。だからこの上明瞭な田中君の肖像が欲しければ、そ・・・<芥川竜之介「葱」青空文庫>
  4. ・・・油でもコンテでも全然抜群で美校の校長も、黒馬会の白島先生も藤田先生も、およそ先生と名のつく先生は、彼の作品を見たものは一人残らず、ただ驚嘆するばかりで、ぜひ展覧会に出品したらというんだが、奴、つむじ曲がりで、うんといわないばかりか、てんで今・・・<有島武郎「ドモ又の死」青空文庫>
  5. ・・・生命がけで、描いて文部省の展覧会で、平つくばって、可いか、洋服の膝を膨らまして膝行ってな、いい図じゃないぜ、審査所のお玄関で頓首再拝と仕った奴を、紙鉄砲で、ポンと撥ねられて、ぎゃふんとまいった。それでさえ怒り得ないで、悄々と杖に縋って背負っ・・・<泉鏡花「紅玉」青空文庫>
  6. ・・・いくたびも生死の境にさまよいながら、今年初めて……東京上野の展覧会――「姐さんは知っているか。」「ええこの辺でも評判でございます。」――その上野の美術展覧会に入選した。 構図というのが、湖畔の霜の鷭なのである。――「鷭は一生を通じて・・・<泉鏡花「鷭狩」青空文庫>
  7. ・・・小間お写真や、展覧会で、蔭ながらよく貴方を存じております。――「私は島津の家内ですが」と宿の人に――「実は見付からないようにおなじ汽車で、あとをつけて来たんです。」辻棲はちっと合ないかも存じませんが、そう云いましたの。……その次第は「島津は・・・<泉鏡花「山吹」青空文庫>
  8. ・・・だも知らざる社会の臆断である、そうかと思えば世界大博覧会などのある時には、日本の古代美術品と云えば真先に茶器が持出される、巴理博覧会シカゴ博覧会にも皆茶室まで出品されて居る、其外内地で何か美術に関する展覧会などがあれば、某公某伯の蔵品必ず茶・・・<伊藤左千夫「茶の湯の手帳」青空文庫>
  9. ・・・ 椿岳の名は十年前に日本橋の画博堂で小さな展覧会が開かれるまでは今の新らしい人たちには余り知られていなかった。展覧会が開かれても、案内を受けて参観した人は極めて小部分に限られて、シカモ多くは椿岳を能く知ってる人たちであったか・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  10. ・・・晩年一部の好書家が斎展覧会を催したらドウだろうと鴎外に提議したところが、鴎外は大賛成で、博物館の一部を貸してもイイという咄があった。鴎外の賛成を得て話は着々進行しそうであったが、好書家ナンテものは蒐集には極めて熱心であっても、展覧会ナゾは気・・・<内田魯庵「鴎外博士の追憶」青空文庫>
  11. ・・・ 例えば私たちが展覧会へ行って多くの画の前に立った時、我々の生活と没交渉なものゝ余りに多過ぎる事を痛感する。勿論、これらの作と雖も或る特殊階級の人々には必要なものかも知れぬが、然し此等の作品が民衆的であるべき目的を度外視して、或る特殊な・・・<小川未明「囚われたる現文壇」青空文庫>
  12. ・・・ 或日学校で生徒の製作物の展覧会が開かれた。その出品は重に習字、図画、女子は仕立物等で、生徒の父兄姉妹は朝からぞろぞろと押かける。取りどりの評判。製作物を出した生徒は気が気でない、皆なそわそわして展覧室を出たり入ったりしている。自分もこ・・・<国木田独歩「画の悲み」青空文庫>
  13. ・・・ 水車場を過ぎて間もなく橋あり、長さよりも幅のかた広く、欄の高さは腰かくるにも足らず、これを渡りてまた林の間を行けばたちまち町の中ほどに出ず、こは都にて開かるる洋画展覧会などの出品の中にてよく見受くる田舎町の一つなれば、茅屋と瓦屋と打ち・・・<国木田独歩「わかれ」青空文庫>
  14. ・・・「今ある展覧会も、できるだけ見て行くがいいぜ。」「そうだよ。」 と、また次郎が答えた。 五月にはいって、次郎は半分引っ越しのような騒ぎを始めた。何かごとごと言わせて戸棚を片づける音、画架や額縁を荷造りする音、二階の部屋を歩き・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  15. ・・・今日までの代の変遷を見せる一種の展覧会、とでも言ったような具合に、あるいは人間の無益な努力、徒に流した涙、滅びて行く名――そういうものが雑然陳列してあるかのように見えた。諸方の店頭には立て素見している人々もある。こういう向の雑書を猟ることは・・・<島崎藤村「並木」青空文庫>
  16. ・・・この次郎は、上京したついでに、今しばらく私たちと一緒にいて、春の展覧会を訪ねたり、旧い友だちを見に行ったりして、田舎の方で新鮮にして来た自分を都会の濃い刺激に試みようとしていた。 まだ私は金を分けることなぞを何も子供らに話してない。匂わ・・・<島崎藤村「分配」青空文庫>
  17. ・・・「そろそろ展覧会の季節になりましたが、何か、ごらんになりましたか。」「まだどこの展覧会も見ていませんが、このごろ、画をたのしんでかいている人が実に少い。すこしも、よろこびが無い。生命力が貧弱です。 ばかに、威張ったような事ばかり・・・<太宰治「一問一答」青空文庫>
  18. ・・・あなたが、瀬戸内海の故郷から、親にも無断で東京へ飛び出して来て、御両親は勿論、親戚の人ことごとくが、あなたに愛想づかしをしている事、お酒を飲む事、展覧会に、いちども出品していない事、左翼らしいという事、美術学校を卒業しているかどうか怪しいと・・・<太宰治「きりぎりす」青空文庫>
  19.  上野の近くに人を尋ねたついでに、帝国美術院の展覧会を見に行った。久し振りの好い秋日和で、澄み切った日光の中に桜の葉が散っていた。 会場の前の道路の真中に大きな天幕張りが出来かかっている。何かの式場になるらしい。柱などを・・・<寺田寅彦「ある日の経験」青空文庫>
  20. ・・・ 人形そのものの形態は、すでにたびたび実物を展覧会などで見たりあるいは写真で見たりして一通りは知っていたのであるが、人形芝居の舞台装置のことについては全く何事も知らなかったので、まず何よりもその点が自分の好奇的な注意をひいた。まず鴨居か・・・<寺田寅彦「生ける人形」青空文庫>
  21. ・・・新しい美術品の展覧場「吾楽」というものが建築されたのは八官町の通りである。雑誌『三田文学』を発売する書肆は築地の本願寺に近い処にある。華美な浴衣を着た女たちが大勢、殊に夜の十二時近くなってから、草花を買いに出るお地蔵さまの縁日は三十間堀の河・・・<永井荷風「銀座」青空文庫>
  22. ・・・主人は喜んで新に買入れた古書錦絵の類を取出して示す。展覧に時刻を移したが、初夏の日は猶高く食時にもまだ大分間がある。さりとてこの人数袂をつらねて散歩に行くべき処もない。上野公園の森は目の前に見えているが無論行く気にはならない。兎に角一同自動・・・<永井荷風「百花園」青空文庫>
  23. ・・・かつて文部省の展覧会の審査員の某氏に会った時、日本の絵画も近頃は大分上手になりましたといったら、その人は文部省の展覧会が出来てから大変好くなりましたと答えた。日本の絵画の年々進歩するのは争うべからざる事実ではあるが、その原因を某氏のように一・・・<夏目漱石「文芸委員は何をするか」青空文庫>
  24. ・・・どうも私は文部省の展覧会に反対をしたり、博士を辞したり、甚だ文部省に受けが悪い人間でありますが今度の文展も公には書きませんでしたが、どうも大変面白くありませんでした。殊に私は日本画の方で、まあそうだと思います。西洋画の方についてもいえばいえ・・・<夏目漱石「模倣と独立」青空文庫>
  25. ・・・唐詩選を見て唐詩を評し、展覧会を見て画家を評するは殆し。蕪村の佳句ばかりを見る者は蕪村を見る者にあらざるなり。「手に草履」ということももし拙く言いのばしなば殺風景となりなん。短くも言い得べきを「嬉しさよ」と長く言いて、長くも言い得べきを・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  26. ・・・ 昨日あたりから上野の美術館で婦人画家ばかりの展覧会が催おされている。芸術の世界で、婦人ばかりの絵画、あるいは婦人ばかりの文学というものはないものだと思う。それだのに婦人画家だけ集まった展覧会が婦人画家たちからもたれているということは、・・・<宮本百合子「明日をつくる力」青空文庫>
  27. ・・・この燈火の煌いた華やかな宴席には、もう何年も前に名をきき知っているばかりでなく、幾つかの絵を展覧会場で見ていて、自分なりに其々にうけ入れているような大家たちも席をつらねている。 司会者の何か特別な意図がふくまれていたのであろうか、 ・・・<宮本百合子「或る画家の祝宴」青空文庫>
  28. ・・・それで今のような、社会民政党の跋扈している時代になっても、ウィルヘルム第二世は護衛兵も連れずに、侍従武官と自動車に相乗をして、ぷっぷと喇叭を吹かせてベルリン中を駈け歩いて、出し抜に展覧会を見物しに行ったり、店へ買物をしに行ったりすることが出・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>
  29.  遠望であるから細かいところは見えないものと承知していただきたい。 ごく大ざっぱな観察ではあるが、美術院展覧会を両分している洋画と日本画とは、時を同じゅうして相並んでいるのが不思議に思えるほど、気分や態度を異にしている。もちろんそれ・・・<和辻哲郎「院展遠望」青空文庫>
  30. ・・・美術院の展覧する日本画が明らかに示しているように、この革新は外部の革新であって内部のそれではないのである。 美術院展覧会を一覧してまず感ずることは、そこに技巧があって画家の内部生命がないことである。東洋画の伝統は千年の古きより一年前の新・・・<和辻哲郎「院展日本画所感」青空文庫>