どう‐さつ【洞察】例文一覧 30件

  1. ・・・最一つ二葉亭は洞察が余り鋭ど過ぎた、というよりも総てのものを畸形的立体式に、あるいは彎曲的螺旋式に見なければ気が済まない詩人哲学者通有の痼癖があった。尤もこういう痼癖がしばしば大きな詩や哲学を作り出すのであるが、二葉亭もまたこの通有癖に累い・・・<内田魯庵「二葉亭追録」青空文庫>
  2. ・・・人間のもろもろの行為が人間の運命と世界過程とにいかに影響するかの複雑な方式を洞察する必要もない。ただ人間の精神に関する知識が必要なるのみである。それは心理上の事実の問題であって、世界認識の問題ではない。自己認識の問題に終始する。 かくの・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  3. ・・・彼の犀利の眼光はこのときすでに禅宗の遁世と、浄土の俗悪との弊を見ぬき、鎌倉の権力政治の害毒を洞察していた。二十一歳のときすでに法然の念仏を破折した「戒体即身成仏義」を書いた。 その年転じて叡山に遊び、ここを中心として南都、高野、天王・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  4. ・・・が潜在していることを洞察して、ゼネラスな態度で、その意をくみとろうと努むべきである。 人間は宿命的に利己的であると説くショウペンハウァーや、万人が万人に対して敵対的であるというホップスの論の背後には、やはり人間関係のより美しい状態への希・・・<倉田百三「学生と読書」青空文庫>
  5. ・・・女性の天賦の霊性と直観力とで、歴史と社会との文化史的向上の方向を洞察して、時代をその方向に導くように、男子を促し、鞭韃し、また自ら立ってそのために奮闘するだけの覚悟がなくてはならぬ。その覚悟はまた自ら子どもをその時代を産むための努力に鼓吹す・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  6. ・・・ アインシュタインの考えでは、若い人の自然現象に関する洞察の眼を開けるという事が最も大切な事であるから、従って実科教育を十分に与えるために、古典的な語学のみならず「遠慮なく云えば」語学の教育などは幾分犠牲にしても惜しくないという考えらし・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  7. ・・・市井の流行風俗、生活状態のようなものはもちろん、いろいろな時代思潮のごときものでも、すぐれた作者の鋭利な直観の力で未然に洞察されていた例も少なくないであろう。未来の可能性は、それがどんなに現在の凡人に無稽に見えても実は現在の可能性のほんのわ・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  8. ・・・昔の絵かきは自然や人間の天然の姿を洞察することにおいて常人の水準以上に卓越することを理想としていたらしく見える。そうして得た洞察の成果を最も卑近な最もわかりやすい方法によって表現したように思われる。しかるにこのごろの多数の新進画家は、もう天・・・<寺田寅彦「からすうりの花と蛾」青空文庫>
  9. ・・・昔の絵描きは自然や人間の天然の姿を洞察することにおいて常人の水準以上に卓越することを理想としていたらしく見える。そうして得た洞察の成果を最も卑近な最も分りやすい方法によって表現したように思われる。然るにこの頃の多数の新進画家は、もう天然など・・・<寺田寅彦「烏瓜の花と蛾」青空文庫>
  10. ・・・そうして、コーヒーの効果は官能を鋭敏にし洞察と認識を透明にする点でいくらか哲学に似ているとも考えられる。酒や宗教で人を殺すものは多いがコーヒーや哲学に酔うて犯罪をあえてするものはまれである。前者は信仰的主観的であるが、後者は懐疑的客観的だか・・・<寺田寅彦「コーヒー哲学序説」青空文庫>
  11. ・・・ また一方で、彼の探偵物には人間の心理の鋭い洞察によって事件の真相を見抜く例も沢山ある。例えば毒殺の嫌疑を受けた十六人の女中が一室に監禁され、明日残らず拷問すると威される、そうして一同新調の絹のかたびらを着せられて幽囚の一夜を過すことに・・・<寺田寅彦「西鶴と科学」青空文庫>
  12. ・・・彼らの中の古老は気象学者のまだ知らない空の色、風の息、雲のたたずまい、波のうねりの機微なる兆候に対して尖鋭な直観的洞察力をもっている。長い間の命がけの勉強で得た超科学的の科学知識によるのである。それによって彼らは海の恩恵を受けつつ海の禍を避・・・<寺田寅彦「日本人の自然観」青空文庫>
  13. ・・・ 「彼の論文を読むと、研究の結果の美しさに打たれるばかりでなく、明晰な洞察力で問題の新しい方面へ切り込んで行く手際の鮮やかさに心を引かれる。また書き方が如何にも整然としていて、粗雑な点が少しもない。」「優れた科学者のうちに、一つの問題に・・・<寺田寅彦「レーリー卿(Lord Rayleigh)」青空文庫>
  14. ・・・ 話が興味の中心に近いて来ると、いつでも爺さんは突然調子を変え、思いもかけない無用なチャリを入れてそれをば聞手の群集から金を集める前提にするのであるが、物馴れた敏捷な聞手は早くも気勢を洞察して、半開きにした爺さんの扇子がその鼻先へと差出・・・<永井荷風「伝通院」青空文庫>
  15. ・・・能働的習慣と受働的習慣との区別の如きは面白い洞察と思う。コンディヤックの感覚論から出でて、その立場を守りながらかえって主意主義的な理想主義的な立場に行ったのである。私はこういう所に、サン・アンチームの哲学独得の、ドイツやイギリスの哲学と異な・・・<西田幾多郎「フランス哲学についての感想」青空文庫>
  16. ・・・ドイツの知識人たちは、ナチスの運動がその背後にどんな大きいドイツの軍国主義者と資本家の大群をひかえているかということを洞察せず、馬鹿にしていたために、祖国とその文化とをナチスに蹂躙されつくした。 一九二〇年代のドイツは、左翼が活躍し、ド・・・<宮本百合子「明日の知性」青空文庫>
  17. ・・・実現の方法、その可能の発見のためには、沈着な現実の観察と洞察とがいるが、それはやっぱり目の先三寸の態度では不可能なのである。 例えばこの頃の私たちの生活は、木炭のことについても、さまざまの新しい経験をしつつある。昔流にいえば、まだ一家の・・・<宮本百合子「新しい船出」青空文庫>
  18. ・・・現象から本質を洞察する気力にみちた精神の習慣へのよびかけがある。精神と肉体とが一致し、感情は理性とともにある行為の美しさへの招集と、善は美であり得るという事実についてのいくとおりかの例証がある。   一九四九年八月一日   追記・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」青空文庫>
  19. ・・・芸術家らしさで、其処を鋭く洞察している。そして、子供が絵をかきはじめるときは、よしんばそれが「へへののもへじ」であろうとも、まず顔に目をひかれ初めるものであるという人間の素朴本然な順序に、すらりとのりうつって、こちらに顔を向けている三人の距・・・<宮本百合子「あられ笹」青空文庫>
  20. ・・・ 民主的な検事局というならば、あらゆる場合、基本的な人権の劬り、事件関係に対する社会の現実に立ったリアルな科学的洞察、真の道義的責任のありどころを明確にすることがのぞまれて当然である。一つの行為に対する法的処罰が、道義上の判断と評価とに・・・<宮本百合子「石を投ぐるもの」青空文庫>
  21. ・・・生きて行く場面で互が苦しく競り合うものとして現れているとすれば、今日目の前にそういう現象を持ち来している社会的な動機への洞察がいつかよびさまされずにいない。女としての境遇に処するということのうちに、おのずからその境遇に向う自身の態度というも・・・<宮本百合子「異性の間の友情」青空文庫>
  22. ・・・家庭というもののうちにあるそういう煩わしい、幾分悲しく腹立たしい過敏な視線が、若い世代を外へとはじき出していることを、父母たちはどの程度に洞察しているだろうか。 社会の歩みは日本の今日の若い世代を片脚だけ鎖の切れたプロメシゥスのような存・・・<宮本百合子「異性の友情」青空文庫>
  23. ・・・私の文学的教養と力量とが、この紛糾と錯綜を、明確に洞察し、整理し得るであろうか。少なからぬ困難が予想されるが、私は読者の忍耐と誠意と自身の熱意とに信頼して、この仕事をやって見る。この人生に明らかな知性と豊かで健全な人間的情熱の発動を熱望する・・・<宮本百合子「意味深き今日の日本文学の相貌を」青空文庫>
  24. ・・・この平凡な確実なことは、子のないときには理解ができても洞察の度合においてはるかに深度が違ってくる。この深度は作家の作品に影響しないはずがない。宇野浩二氏の『子の来歴』に一番打たれた人々も子のない人に多いのは、観賞に際してもあまりに曇りがなか・・・<横光利一「作家の生活」青空文庫>
  25. ・・・此の故に一つの批評にして、もしその批評が深き洞察と認識とを以ってわれわれを教養するならば、それは作物のみとは限らず批評それ自身作物となって高貴な感覚を放散し出すにちがいない。そう云う高価な感覚的批評は現れないか。そう云う秀抜な批評的感覚は現・・・<横光利一「新感覚論」青空文庫>
  26. ・・・程度のことから始まったと自然な洞察を下して、また酒盃をとり上げた。 併し此の噂は村の幾宵を騒がせた。そして、軈て来る冬の仕事の手始めとして、先ず柴山の選定に村人達が悩み始める頃迄続いていった。三 まだ夕暮には時があった。・・・<横光利一「南北」青空文庫>
  27. ・・・ただ一つ、、彼の洞察した「神を求むる心」あるいは「信じようとする意志」について少しく観察してみよう。「ある者」を信じようとする意志は、人間の自然として、少なくとも性愛と同じ程度の根強さをもって我々の内にわだかまっている。それは恐らく自己・・・<和辻哲郎「「自然」を深めよ」青空文庫>
  28. ・・・この条件が能面の制作家に種々の洞察を与えたでもあろう。しかしいかなる条件に恵まれていたにもせよ、人面を彫刻的に表現するに際して、自然的な表情の否定によって仕事をすることに思い至ったのは、驚くべき天才のしわざであると言わねばならぬ。能面の様式・・・<和辻哲郎「能面の様式」青空文庫>
  29. ・・・その思索は君の画と同じく深い洞察に充たされ、君の画と同じく不思議な生を捕えている。もとより自分はここに説かれた「思想」が岸田君の画の根柢であるというのではない。岸田君の画の根柢は、君の語をかりて言えば、君自身の「内なる美」である。「精神」で・・・<和辻哲郎「『劉生画集及芸術観』について」青空文庫>
  30. ・・・付け焼き刃に白眼をくるる者は虚栄の仮面を脱がねばならぬ、高き地にあってすべてを洞察する時、虚栄は実に笑うに堪えぬ悪戯である。美を装い艶を競うを命とする女、カラーの高さに経営惨憺たる男、吾人は面に唾したい、食を粗にしてフェザーショールを買う人・・・<和辻哲郎「霊的本能主義」青空文庫>