どう‐じょう〔‐ジヤウ〕【同情】例文一覧 32件

  1. ・・・こっちの善い所は勿論了解してくれるし、よしんば悪い所を出しても同情してくれそうな心もちがする。又実際、過去の記憶に照して見ても、そうでなかった事は一度もない。唯、この弟たるべき自分が、時々向うの好意にもたれかゝって、あるまじき勝手な熱を吹く・・・<芥川竜之介「兄貴のような心持」青空文庫>
  2. ・・・第四階級は他階級からの憐憫、同情、好意を返却し始めた。かかる態度を拒否するのも促進するのも一に繋って第四階級自身の意志にある。 私は第四階級以外の階級に生まれ、育ち、教育を受けた。だから私は第四階級に対しては無縁の衆生の一人である。私は・・・<有島武郎「宣言一つ」青空文庫>
  3. ・・・ それで魚に同情を寄せるのである。 なんであの魚はまだ生を有していながら、死なねばならないのだろう。 それなのにぴんと跳ね上がって、ばたりと落ちて死ぬるのである。単純な、平穏な死である。 小娘はやはり釣っている。釣をする人の・・・<著:アルテンベルクペーター 訳:森鴎外「釣」青空文庫>
  4. ・・・帰ってきて私はまず、新らしい運動に同情を持っていない人の意外に多いのを見て驚いた。というよりは、一種の哀傷の念に打たれた。私は退いて考えてみた。しかし私が雪の中から抱いてきた考えは、漠然とした幼稚なものではあったが、間違っているとは思えなか・・・<石川啄木「弓町より」青空文庫>
  5. ・・・ さてはいかなる医学士も、驚破という場合に望みては、さすがに懸念のなからんやと、予は同情を表したりき。 看護婦は医学士の旨を領してのち、かの腰元に立ち向かいて、「もう、なんですから、あのことを、ちょっと、あなたから」 腰元は・・・<泉鏡花「外科室」青空文庫>
  6. ・・・ 予は打ち消そうとこういってみたけれど、お光さんの境遇に同情せぬことはできない。お光さんはじっとふたりの子どもを見つめるようすであったが、「私は子どもさえあれば何がなくてもよいと思います。それゃ男の方は子がないとて平気でいられましょ・・・<伊藤左千夫「紅黄録」青空文庫>
  7. ・・・仲に立った僕は時に前者に、時に後者に、同情を寄せながら、三人の食事はすんだ。妻が不断飲まない酒を二、三杯傾けて赤くなったので、焼け酒だろうと冷かすと、東京出発前も、父の家でそう心配ばかりしないで、ちょッと酒でも飲めと言われたのをしおに、初め・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  8. ・・・政治家や実業家には得てこういう人を外らさない共通の如才なさがあるものだが、世事に馴れない青年や先輩の恩顧に渇する不遇者は感激して忽ち腹心の門下や昵近の知友となったツモリに独りで定めてしまって同情や好意や推輓や斡旋を求めに行くと案外素気なく待・・・<内田魯庵「三十年前の島田沼南」青空文庫>
  9. ・・・しかも、人が苦しみを経験し、若しくは苦痛を経験し、若しくは生活上の奮闘を余儀なくされている場合、社会の同情、博愛、慈善事業、宗教家等に依って救うということは何時まで経ってもその人間に本当の霊を見せずにしまうものである。極端なる苦痛は最後に確・・・<小川未明「愛に就ての問題」青空文庫>
  10. ・・・そない言うてからに、うまいこと相手の同情ひきよりまんねんぜ。ほら昨夜従兄弟がどないやとか、こないやとか言うとりましたやろ、あれもやっぱり手エだんねん。なにが彼女に従兄弟みたいなもんおますかいな。ほんまにあんた、警戒せなあきまへんぜ」 警・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  11. ・・・斯う心の中に思いながら、彼が目下家を追い立てられているということ、今晩中に引越さないと三百が乱暴なことをするだろうが、どうかならぬものだろうかと云うようなことを、相手の同情をひくような調子で話した。「さあ……」と横井は小首を傾げて急に真・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  12. ・・・とがある「僕の知っている女でお正さんというのがあるが、容貌は十人並で、ただ愛嬌のある女というに過ないけれど、如何にも柔和な、どちらかと言えば今少しはハキハキしてもと思わるる程の性分で何処までも正直な、同情の深そうな娘である。肉づきまでがふっ・・・<国木田独歩「恋を恋する人」青空文庫>
  13. ・・・この身に親しいインティメイトな感じが倫理学への愛と同情と研究の恒心とを保証するものなのである。     二 倫理学の入門 倫理学の祖といわれるソクラテス以来最近のシェーラーやハルトマンらの現象学派の倫理学にいたるまで、人間の・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  14. ・・・ 軍医の云ったことが間違いでないのを確めた看護卒は、同じ言葉を附近の負傷者に同情を持たぬ声で繰りかえした。 栗本は、脚がブル/\慄えだした。「俺等をかえさんというんじゃあるまいな?」 田口は、また困ったような顔をして答えなか・・・<黒島伝治「氷河」青空文庫>
  15. ・・・と打解けて同情し、場合によったら助言でも助勢でもしてやろうという様子だ。「イヤ割が悪いどころでは無い、熔金を入れるその時に勝負が着くのだからネ。機嫌が甚く悪いように見えたのは、どういうものだか、帰りの道で、吾家が見えるようになってフ・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  16. ・・・さもなければ、君、誰がこんな忠告なぞするものか、実際君の苦しい有様を見ると、僕は大に同情を寄せる。まあ僕は哭きたいような気が起る。真実に苦しんで見たものでなければ、苦しんで居る人の心地は解らないからね。そこだ。もし君が僕の言うことを聞く気が・・・<島崎藤村「朝飯」青空文庫>
  17. ・・・先方の事情にすぐ安値な同情を寄せて、気の毒だ、かわいそうだと思う。それが動機で普通道徳の道を歩んでいる場合も多い。そしてこれが本当の道徳だとも思った。しかしだんだん種々の世故に遭遇するとともに、翻って考えると、その同情も、あらゆる意味で自分・・・<島村抱月「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」青空文庫>
  18. ・・・ 熱い同情が老人の胸の底から涌き上がった。その体は忽ち小さくなって、頭がぐたりと前に垂れて、両肩がすぼんで、背中が曲がった。丁度水を打ち掛けられた犬のような姿である。そしてあわただしげに右の手をずぼんの隠しに入れてありたけの貨幣を掴み出・・・<著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外「鴉」青空文庫>
  19. ・・・ 最後にこの震災について諸外国からそそがれた大きな同情にたいしては、全日本人が深く感謝しなければなりません。米国はいち早く東洋艦隊を急派して、医療具、薬品等を横浜へはこんで来ました。なお数せきの御用船で食糧や、何千人を入れ得るテント病院・・・<鈴木三重吉「大震火災記」青空文庫>
  20.  この新聞の編輯者は、私の小説が、いつも失敗作ばかりで伸び切っていないのを聡明にも見てとったのに違いない。そうして、この、いじけた、流行しない悪作家に同情を寄せ、「文学の敵、と言ったら大袈裟だが、最近の文学に就いて、それを毒・・・<太宰治「鬱屈禍」青空文庫>
  21. ・・・おりおりその身に対する同情の言葉が交される。彼は既に死を明らかに自覚していた。けれどそれが別段苦しくも悲しくも感じない。二人の問題にしているのはかれ自身のことではなくて、ほかに物体があるように思われる。ただ、この苦痛、堪え難いこの苦痛から脱・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  22. ・・・彼に対する同情者は遠方から電報をよこしたりした。その中にはマクス・ラインハルトの名も交じっていた。 その後ナウハイムで科学者大会のあった時、特にその中の一日を相対論の論評にあてがった。その時の会場は何となく緊張していたが当人のアインシュ・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  23. ・・・理性にも同情にも訴うるのでなく、唯過敏なる感覚をのみ基礎として近世の極端なる芸術を鑑賞し得ない人は、彼からいえば到底縁なき衆生であるのだ。女の嫌いな人に強て女の美を説き教える必要はない。酒に害あるはいわずと知れた話である。然もその害毒を恐れ・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  24. ・・・しかし倫理的に申したならば、人が落ちたというに笑うはずがない、気の毒だという同情があって然るべきである、殊に私のような招かれて来た者に対する礼儀としても笑うのは倫理的でない事は明である。けれども笑うという事と、気の毒だと思う事と、どちらか捨・・・<夏目漱石「教育と文芸」青空文庫>
  25. ・・・我らの相対して相言う能わざりし所に、言語はおろか、涙にも現わすことのできない深き同情の流が心の底から底へと通うていたのである。 余も我子を亡くした時に深き悲哀の念に堪えなかった、特にこの悲が年と共に消えゆくかと思えば、いかにもあさましく・・・<西田幾多郎「我が子の死」青空文庫>
  26. ・・・『僕も主義を改めて、あの百姓のお神さんに同情するさ。』 彼可厭と思った学生の声でしたから、私達は急いで停車場を出て、待たせて置いた宅の俥に乗って帰ったのでした。 私は彼女の方は、日本の人か知ら、他国の人じゃないかと思いました。で・・・<広津柳浪「昇降場」青空文庫>
  27. ・・・栄誉利害を異にすれば、また従て同情相憐むの念も互に厚薄なきを得ず。譬えば、上等の士族が偶然会話の語次にも、以下の者共には言われぬことなれどもこの事は云々、ということあり。下等士族もまた給人分の輩は知らぬことなれども彼の一条は云々、とて、互に・・・<福沢諭吉「旧藩情」青空文庫>
  28. ○昔から名高い恋はいくらもあるがわれは就中八百屋お七の恋に同情を表するのだ。お七の心の中を察すると実にいじらしくていじらしくてたまらん処がある。やさしい可愛らしい彼女の胸の中には天地をもとろかすような情火が常に炎々として燃えて居る。その・・・<正岡子規「恋」青空文庫>
  29. ・・・それは大いに同情するね。」「今日は石を運ばせてやろうか。おい。みんな今日は石を一人で九十匁ずつ運んで来い。いや、九十匁じゃあまり少いかな。」「うん。九百貫という方が口調がいいね。」「そうだ、そうだ。どれだけいいか知れないね。おい・・・<宮沢賢治「カイロ団長」青空文庫>
  30. ・・・ことがなければプロレタリア文学は真の芸術であり得ないという片上伸の主張とそのためのたたかいを著者は、同情と批判をもって跡づけている。 この初期の二つの評論にはっきりあらわれているように階級の歴史的経験を、自身の実感としないではいられなか・・・<宮本百合子「巖の花」青空文庫>