ねん‐らい【年来】例文一覧 30件

  1. ・・・「私の占いは五十年来、一度も外れたことはないのですよ。何しろ私のはアグニの神が、御自身御告げをなさるのですからね」 亜米利加人が帰ってしまうと、婆さんは次の間の戸口へ行って、「恵蓮。恵蓮」と呼び立てました。 その声に応じて出・・・<芥川竜之介「アグニの神」青空文庫>
  2. ・・・の記事によれば、当日の黄塵は十数年来未だ嘗見ないところであり、「五歩の外に正陽門を仰ぐも、すでに門楼を見るべからず」と言うのであるから、よほど烈しかったのに違いない。然るに半三郎の馬の脚は徳勝門外の馬市の斃馬についていた脚であり、そのまた斃・・・<芥川竜之介「馬の脚」青空文庫>
  3. ・・・ この犬は年来主人がなくて饑渇に馴れて居るので、今食物を貰うようになっても余り多くは喰べない。しかしその少しの食物が犬の様子を大相に変えた。今までは処々に捩れて垂れて居て、泥などで汚れて居た毛が綺麗になって、玻璃のように光って来た。この・・・<著:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ 訳:森鴎外「犬」青空文庫>
  4. ・・・ 以上のいい方はあまり大雑駁ではあるが、二三年来の詩壇の新らしい運動の精神は、かならずここにあったと思う。否、あらねばならぬと思う。かく私のいうのは、それらの新運動にたずさわった人たちが二三年前に感じたことを、私は今始めて切実に感じたの・・・<石川啄木「弓町より」青空文庫>
  5. ・・・―― そこら、屋敷小路の、荒廃離落した低い崩土塀には、おおよそ何百年来、いかばかりの蛇が巣くっていたろう。蝮が多くて、水に浸った軒々では、その害を被ったものが少くない。 高台の職人の屈竟なのが、二人ずれ、翌日、水の引際を、炎天の・・・<泉鏡花「絵本の春」青空文庫>
  6. ・・・――そこで、心得のある、ここの主人をはじめ、いつもころがり込んでいる、なかまが二人、一人は検定試験を十年来落第の中老の才子で、近頃はただ一攫千金の投機を狙っています。一人は、今は小使を志願しても間に合わない、慢性の政治狂と、三個を、紳士、旦・・・<泉鏡花「木の子説法」青空文庫>
  7. ・・・お貞は、今に至るまでも、このことを言い出しては、軽蔑と悪口との種にしているが、この一、二年来不景気の店へ近ごろ最もしげしげ来るお客は青木であったから、陰で悪く言うものの、面と向っては、進まないながらも、十分のお世辞をふり撤いていた。 青・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  8. ・・・と生前豪語していた通りに十四、五年来著るしく随喜者を増し、書捨ての断片をさえ高価を懸けて争うようにもてはやされて来た。 椿岳の画は今の展覧会の絵具の分量を競争するようにゴテゴテ盛上げた画とは本質的に大に違っておる。大抵は悪紙に描きなぐっ・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  9. ・・・ 鴎外は睡眠時間の極めて少ない人で、五十年来の親友の賀古翁の咄でも四時間以上寝た事はないそうだ。少年時代からの親交であって度々鴎外の家に泊った事のある某氏の咄でも、イツ寝るのかイツ起きるのか解らなかったそうだ。 鴎外の花園町の家・・・<内田魯庵「鴎外博士の追憶」青空文庫>
  10. ・・・何十年来一日も欠かさず水をそそがれた不動明王の体からは蒼い苔がふき出している。むろん乾いたためしはない。燈火の火が消えぬように。 水をかけ終ると、やがて彼女たちはおみくじをひく。あっ? 凶だ。 しかし、心配はいらぬ。石づくりの狐が一・・・<織田作之助「大阪発見」青空文庫>
  11. ・・・       二 彼は大晦日の晩から元旦の朝へかけて徹夜で仕事をしなかった年は、ここ数年来一度もないという。それほど忙しいわけだが、しかしまた、それほど仕事にかけると熱心な男なのだ。 だから、仕事以外のことは何一つ考えよ・・・<織田作之助「鬼」青空文庫>
  12. ・・・その間に横井は、彼が十年来続けてるという彼独特の静座法の実験をして見せたりした。横井は椅子に腰かけたまゝでその姿勢を執って、眼をつぶると、半分とも経たないうちに彼の上半身が奇怪な形に動き出し、額にはどろ/\汗が流れ出す。横井はそれを「精神統・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  13. ・・・それに、年来の宿痾が図書館の古い文献を十分に調べることを妨げた。なお、戦争に関する詩歌についても、与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」、石川啄木の「マカロフ提督追悼の詩」を始め戦争に際しては多くが簇出しているし、また日露戦争中、二葉亭がガ・・・<黒島伝治「明治の戦争文学」青空文庫>
  14. ・・・するのとやにわに打ちこまれて俊雄は縮み上り誠恐誠惶詞なきを同伴の男が助け上げ今日観た芝居咄を座興とするに俊雄も少々の応答えが出来夜深くならぬ間と心むずつけども同伴の男が容易に立つ気色なければ大吉が三十年来これを商標と磨いたる額の瓶のごとく輝・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  15. ・・・「なにしろ、十年来の寒さだった。我輩なぞはよく凍え死ななかったようなものだ。若い者だってこの寒さじゃ堪りませんナ」 と学士は言って、汚れた雪の上に降りそそぐ雨を眺め眺め歩いた。 漸く顕れかけた暗い土、黄ばんだ竹の林、まだ枯々とし・・・<島崎藤村「岩石の間」青空文庫>
  16. ・・・河は数千年来層一層の波を、絶えず牧場と牧場との間を穿って下流へ送っている。なんの目的で河が流れているかは知れないが、どうしても目的がありそうである。この男等の生涯も単調な、疲労勝な労働、欲しいものがあっても得られない苦、物に反抗するような感・・・<著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外「鴉」青空文庫>
  17. ・・・私は、この十年来、東京に於いて実にさまざまの醜態をやって来ているのだ。とても許される筈は無いのだ。「なあに、うまくいきますよ。」北さんはひとり意気軒昂たるものがあった。「あなたは柳生十兵衛のつもりでいなさい。私は大久保彦左衛門の役を買い・・・<太宰治「帰去来」青空文庫>
  18. ・・・十年来の信条であった。肉体化さえ、されて居る。十年後もまた、変ることなし。けれども私は、労働者と農民とが私たちに向けて示す憎悪と反撥とを、いささかも和げてもらいたくないのである。例外を認めてもらいたくないのである。私は彼等の単純なる勇気を二・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  19. ・・・吾等の祖先から二千年来使い馴れたユークリッド幾何学では始末が付かなかった。その代りになるべき新しい利器を求めている彼の手に触れたのは、前世紀の中頃に数学者リーマンが、そのような応用とは何の関係もなしに純粋な数学上の理論的の仕事として残してお・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  20. ・・・ 池の周囲の磁力測量、もっとも伏角だけではあるが、数年来つづけてやって来て、材料はかなりたまっている。地形によって説明されるような偏差がかなり著しく出ていておもしろいから、いつかまとめておきたいと思いながらそのままになっている。池の断面・・・<寺田寅彦「池」青空文庫>
  21. ・・・    昨日は紅楼に爛酔するの人年来多病感二前因一。  年来 多病にして前因を感じ旧恨纏綿夢不レ真。   旧恨 纏綿として夢真ならず今夜水楼先得レ月。   今夜 水楼 先ず月を得て清光偏照善愁人。    清光 偏えに照ら・・・<永井荷風「夏の町」青空文庫>
  22. ・・・太十は数年来西瓜を作ることを継続し来った。彼はマチの小遣を稼ぎ出す工夫であった。それでもそれは単に彼一人の丹精ではなくて壻の文造が能くぶつぶついわれながら使われた。お石が来なくなってから彼は一意唯銭を得ることばかり腐心した。其年は雨が順よく・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  23. ・・・そうかと云ってこの人造世界に向って猪進する勇気は無論ないです。年来の生活状態からして、私は始終山の手の竹藪の中へ招かれている。のみならず、この竹藪や書物のなかに、まるで趣の違った巣を食って生きて来たのです。その方が私の性に合う。それから直接・・・<夏目漱石「虚子君へ」青空文庫>
  24. ・・・ 秋山は、ベルの中絶するのを待っている間中、十数年来、曾てない腰の痛みに悩まされていた。その時間は二分とはなかった、が彼には二時間にも思えた。 秋山は平生から信じていた。導火線に火を移す時は、たといどんな病気でも、一時遠慮するものだ・・・<葉山嘉樹「坑夫の子」青空文庫>
  25. ・・・百千年来蛮勇狼藉の遺風に籠絡せられて、僅に外面の平穏を装うと雖も、蛮風断じて永久の道に非ず。我輩は其所謂女子敗徳の由て来る所の原因を明にして、文明男女の注意を促さんと欲する者なり。又初めに五疾の第五は智恵浅きことなりと記して、末文に至り中に・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  26. ・・・今日は二の酉でしかも晴天であるから、昨年来雨に降られた償いを今日一日に取りかえそうという大景気で、その景気づけに高く吊ってある提灯だと分るとその赤い色が非常に愉快に見えて来た。 坂を下りて提灯が見えなくなると熊手持って帰る人が頻りに目に・・・<正岡子規「熊手と提灯」青空文庫>
  27. 「愛と死」が、読むものの心にあたたかく自然に触れてゆくところをもった作品であることはよくわかる。武者小路実篤氏の独特な文体は、『白樺』へ作品がのりはじめた頃から既に三十年来読者にとって馴染ふかいものであり、しかもこの頃は、一・・・<宮本百合子「「愛と死」」青空文庫>
  28. ・・・自分の任用したものは、年来それぞれの職分を尽くして来るうちに、人の怨みをも買っていよう。少くも娼嫉の的になっているには違いない。そうしてみれば、強いて彼らにながらえていろというのは、通達した考えではないかも知れない。殉死を許してやったのは慈・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  29. ・・・古人の悩んだこんな悩ましさも、十数年来まだ梶から取り去られていなかった。そして、戦争が敗北に終わろうと、勝利になろうと、同様に続いて変らぬ排中律の生みつづけていく難問たることに変りはない。「あなたの光線は、威力はどれほどのものですか。」・・・<横光利一「微笑」青空文庫>
  30. ・・・ しかしこの十年来の革新の努力がどういう結果を生んだかという事になると、我々は強い失望を感ぜずにはいられない。美術院の展覧する日本画が明らかに示しているように、この革新は外部の革新であって内部のそれではないのである。 美術院展覧会を・・・<和辻哲郎「院展日本画所感」青空文庫>