はく‐しゃく【伯爵】例文一覧 27件

  1. ・・・もっとも華族ならば伯爵か子爵ですね。どう云うものか公爵や侯爵は余り小説には出て来ないようです。 保吉 それは伯爵の息子でもかまいません。とにかく西洋間さえあれば好いのです。その西洋間か、銀座通りか、音楽会かを第一回にするのですから。……・・・<芥川竜之介「或恋愛小説」青空文庫>
  2. 上 実は好奇心のゆえに、しかれども予は予が画師たるを利器として、ともかくも口実を設けつつ、予と兄弟もただならざる医学士高峰をしいて、某の日東京府下の一病院において、渠が刀を下すべき、貴船伯爵夫人の手術をば予をして見せしむることを・・・<泉鏡花「外科室」青空文庫>
  3. ・・・わに置きつつ、翡翠、紅玉、真珠など、指環を三つ四つ嵌めた白い指をツト挙げて、鬢の後毛を掻いたついでに、白金の高彫の、翼に金剛石を鏤め、目には血膸玉、嘴と爪に緑宝玉の象嵌した、白く輝く鸚鵡の釵――何某の伯爵が心を籠めた贈ものとて、人は知って、・・・<泉鏡花「伯爵の釵」青空文庫>
  4. ・・・堀田伯爵のために描いた『徒然草』の貼交ぜ屏風一双は椿岳晩年の作として傑作の中に数うべきものであって、その下画らしいものが先年の椿岳展覧会にも二、三枚見えた。依田学海翁の漢文の椿岳伝が屏風の裏に貼ってあったそうだが、学海の椿岳伝は『譚海』の中・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  5. ・・・が、家を尋ねると、藤堂伯爵の小さな長屋に親の厄介となってる部屋住で、自分の書斎らしい室さえもなかった。緑雨のお父さんというは今の藤堂伯の先々代で絢尭斎の名で通ってる殿様の准侍医であった。この絢尭斎というは文雅風流を以て聞えた著名の殿様であっ・・・<内田魯庵「斎藤緑雨」青空文庫>
  6. ・・・美くしい洋装の貴夫人が帽子も被らず靴も穿かず、髪をオドロと振乱した半狂乱の体でバタバタと駈けて来て、折から日比谷の原の端れに客待ちしていた俥を呼留め、飛乗りざまに幌を深く卸させて神田へと急がし、只ある伯爵家の裏門の前で俥を停めさせて、若干の・・・<内田魯庵「四十年前」青空文庫>
  7. ・・・ 見せて貰うと、洗濯屋の名刺のように大きな名刺で「伯爵勲一等板垣退助五女……」という肩書がれいれいしくはいっていた。 彼はがっかりして会わずに帰った。<織田作之助「民主主義」青空文庫>
  8. ・・・会は非常な盛会で、中には伯爵家の令嬢なども見えていましたが夜の十時頃漸く散会になり僕はホテルから芝山内の少女の宅まで、月が佳いから歩るいて送ることにして母と三人ぶらぶらと行って来ると、途々母は口を極めて洋行夫婦を褒め頻と羨ましそうなことを言・・・<国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」青空文庫>
  9. ・・・ 侯爵顔や伯爵顔を遠慮なくさらけ出してそのごうまんぶれいな風たら無かった。乃公もグイと癪に触ったから半時も居らんでずんずん宿へ帰ってやった」と一杯一呼吸に飲み干して校長に差し、「それも彼奴等の癖だからまア可えわ、辛棒出来んのは高山や長谷・・・<国木田独歩「富岡先生」青空文庫>
  10. ――こんな小説も、私は読みたい。        A 美濃十郎は、伯爵美濃英樹の嗣子である。二十八歳である。 一夜、美濃が酔いしれて帰宅したところ、家の中は、ざわめいている。さして気にもとめ・・・<太宰治「古典風」青空文庫>
  11. ・・・       *          *          * 陸軍竜騎兵中尉伯爵ポルジイ・キルヒネツゲルは実際邸へ帰った。そして夜の更けるまで書きものをしていた。友達の旆騎兵中尉は、「なに、色文だろう」と、自ら慰めるように、跡で独言・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  12. ・・・の代わりに、バルコンの下から忍びよるド・サヴィニャク伯爵の梯子が石欄に触れる「ティック」の音を置き換えてある。ばかげているようであるが、この音で夢の世界から現実の世界へ観客を呼び返す役目をつとめさせているのである。 公爵のシャトーの中の・・・<寺田寅彦「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」青空文庫>
  13. ・・・ルなり、ハンドルはもっとも危険の道具にして、一度びこれを握るときは人目を眩せしむるに足る目勇しき働きをなすものなり かく漆桶を抜くがごとく自転悟を開きたる余は今例の監督官及びその友なる貴公子某伯爵と共にくつわを連ねて「クラパムコンモ・・・<夏目漱石「自転車日記」青空文庫>
  14. ・・・エーンズウォースには斧の刃のこぼれたのをソルスベリ伯爵夫人を斬る時の出来事のように叙してある。余がこの書を読んだとき断頭場に用うる斧の刃のこぼれたのを首斬り役が磨いでいる景色などはわずかに一二頁に足らぬところではあるが非常に面白いと感じた。・・・<夏目漱石「倫敦塔」青空文庫>
  15. ・・・「そう、わしは先刻伯爵からご言伝になった医者ですがね。」「それは失礼いたしました。椅子もございませんがまあどうぞこちらへ。そして私共は立派になれましょうか。」「なりますね。まあ三服でちょっとさっきのむすめぐらいというところ。しか・・・<宮沢賢治「ひのきとひなげし」青空文庫>
  16. ・・・ 子福者小笠原伯爵の何番目かの娘さんが最近スポーツマンであった体躯肥大な某氏と結婚された写真が出ていた。月給は七十円だけれども、豪壮な新邸に住まわれるそうである。一寸名のあるスポーツマンになるといいぜ、就職が楽だぜ。そういう功利的通念は・・・<宮本百合子「新しい一夫一婦」青空文庫>
  17. ・・・裏は、人力車一台やっと通る細道が曲りくねって、真田男爵のこわい竹藪、藤堂伯爵の樫の木森が、昼間でも私に後を振返り振返りかけ出させた。 袋地所で、表は狭く却って裏で間口の広い家であったから、勝ち気な母も不気味がったのは無理のない事だ。又実・・・<宮本百合子「犬のはじまり」青空文庫>
  18. ・・・縁側から油障子のはまった水口が見え、その障子が開いていると、裏の生垣、その彼方の往来、そのまた先の×伯爵の邸の樫の幹まで三四本は見られる。             * お祖母さんの家はそのような家なのであった。二階があった。そこに叔・・・<宮本百合子「毛の指環」青空文庫>
  19. ・・・マルクシズムに対して母親の感情へまで入っている材料は、その会で博士とか伯爵とかが丁寧な言葉づかいで撒布するそのものなのであった。 母親は保守的になって、しかも仏いじりの代りに国体を云々するようにその強い気質をおびきよせられているのであっ・・・<宮本百合子「刻々」青空文庫>
  20. ・・・ レフ・トルストイが、ヤスナヤ・ポリャーナの村荘にロシア名門の伯爵の長男として生れたのは一八二八年のことであった。トルストイも八歳で孤児になった。非常に人物の傑れた叔母に育てられ、その没後数年は当時のロシアの富裕で大胆で複雑な内的・社会・・・<宮本百合子「ジャンの物語」青空文庫>
  21. ・・・ 諸君はラサールとハッツフェルド伯爵夫人との関係を知らずしてラサールを識ることは出来ぬ。」と―― 成程、われわれは、帝政時代のロシア貴族階級が生んだ国際的な作家の一人である伯爵イン・ツルゲーネフの生涯を語るには、彼の娘を生んですてられた・・・<宮本百合子「ツルゲーネフの生きかた」青空文庫>
  22. ・・・貴族の陪審員として、偶然、その日の公判に臨席していたネフリュードフが、シベリア流刑を宣告されたそのカチューシャという売笑婦こそ、むかし若かった自分が無責任にもてあそんだ伯爵家の小間使いであったことを発見する。そして、道徳的責任にたえがたくめ・・・<宮本百合子「動物愛護デー」青空文庫>
  23. ・・・この四ヵ月にわたるロオマとネエプルの旅の間で、マリアの第二の愛情の対象となった伯爵アントネリオの息子ピエトロと相識った。ピエトロはマリアに魅せられ、マリアもつよく彼にひきつけられて、この一八七六年の日記は、寸刻もじっとしていない若々しい激情・・・<宮本百合子「マリア・バシュキルツェフの日記」青空文庫>
  24. ・・・エゴーの分析 リアリズム 古き十八世紀風なもの 社会的場面の描写 特にサロン     スタンダールの帝政時代観 p.28 リュシアンの入った第三師団管轄区の査閲を拝命した伯爵N中将について。p.29 N伯・・・<宮本百合子「「緑の騎士」ノート」青空文庫>
  25. ・・・ 往来に面した掲示板に今日は成人教育プログラムともう一つの紙が貼られている。伯爵某々が下賜された土地小住宅とともに十五年年賦で分譲する。希望者は事務所へ照会せよ。 ホワイト・チャペル通の交叉点を過ると、街の相貌がだんだん違って来・・・<宮本百合子「ロンドン一九二九年」青空文庫>
  26. ・・・Strindberg は伯爵家の令嬢が父の部屋附の家来に身を任せる処を書いて、平民主義の貴族主義に打ち勝つ意を寓した。これまでもストリンドベルクは本物の気違になりはすまいかと云われたことが度々あるが、頃日また少し怪しくなり掛かっている。いず・・・<森鴎外「沈黙の塔」青空文庫>
  27. ・・・このようなところから考えても、ドストエフスキイが伯爵であるトルストイの作を評して、庶民というものをトルストイは知っていないと片づけたのも、トルストイにとっては致命的な痛さだったにちがいない。貴族のことを好んで書いたバルザックも誰か無名の貴族・・・<横光利一「作家の生活」青空文庫>