・・・妹娘が兄のかくしておいたハタを紙型用にもち出して同級生に、とやかくいわれる場面はおもしろい。しかし、あとでアカハタが村へもっと入るようになってほかの娘も紙型用に学校へもって来るというところは、どうだろうか。何となし読んで、ひっかかった。アカ・・・ 宮本百合子 「稚いが地味でよい」
・・・ 髪の毛や肩の上へ、箪笥を照していると同じ赤っぽい電燈の光を受けながら、和服で胡坐をかいた宮本が、そこにあった紙型をとりあげて私にその拵えかたを説明した。紙がしめっているうちに細かくたたいて字を出すんだと云うようなことを話し、話しながら・・・ 宮本百合子 「日記」
・・・幸な事にはまだ紙型が築地の活版所から受け取って無かったので、これは災を免れた。そのうちに第一部の正誤が出来たので、一面紙型を象嵌で直し、一面正誤表を印刷することを富山房に要求した。第一部の象嵌は出来た。しかし燼余の五百部は世間の誅求が急なの・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
出典:青空文庫