ゆく‐みず【行く水】
流れていく水。流水。「—に数かくよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり」〈古今・恋一〉
ゆくみず‐の【行く水の】
[枕]水の流れ去るさまから、「過ぐ」「とどめかぬ」にかかる。「—過ぎにし妹(いも)が形見とそ来(こ)し」〈万・一七九七〉 「玉藻なすなびきこい伏し—留(とど)めかねつと」〈万・四二一四〉
ゆくもかえるも‐の‐せき【行くも帰るもの関】
《後撰集の「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂(おうさか)の関」から》近江国の逢坂の関の異称。
往(ゆ)く者(もの)は追(お)わず来(く)る者(もの)は拒(こば)まず
《「孟子」尽心下から》立ち去る者はあえて引きとめず、道を求めてくる者は、だれでも受け入れる。去る者は追わず、来(きた)る者は拒まず。
ゆく‐ゆく
[副] 1 とどこおることなく物事が進行するさま。どんどん。ずんずん。「御腹は—と高くなる」〈宇津保・国譲下〉 2 遠慮のないさま。はばからないさま。「—と宮にも愁へ聞こえ給ふ」〈源・賢木〉
ゆく‐ゆく【行く行く】
[副] 1 行く末。やがて。将来。「—は家業を継ぐことになる」 2 歩きながら。道すがら。「何を買おうかと—考えていた」
ゆくら‐か
[形動ナリ]ゆったりとしているさま。一説に、ゆらゆら揺れる意とも。「いざりする海人(あま)の梶(かぢ)の音—に妹は心に乗りにけるかも」〈万・三一七四〉
ゆくら‐ゆくら
[形動ナリ]揺れ動くさま。ゆらりゆらり。「天雲の—に葦垣(あしかき)の思ひ乱れて」〈万・三二七二〉
ゆくり‐か
[形動ナリ] 1 思いがけないさま。突然であるさま。「山里の御歩(あり)きも—におぼし立つなりけり」〈源・総角〉 2 軽はずみであるさま。不用意なさま。「—にあざれたる事の」〈源・夕霧〉
ゆくり‐なく
[副]《形容詞「ゆくりなし」の連用形から》思いがけなく。突然に。「—言葉の糸ぐちがほぐれた」〈万太郎・露芝〉