・・・クーボー大博士も、たびたび気象や農業の技師たちと相談したり、意見を新聞へ出したりしましたが、やっぱりこの激しい寒さだけはどうともできないようすでした。 ところが六月もはじめになって、まだ黄いろなオリザの苗や、芽を出さない木を見ますと、ブ・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
・・・ 青年団の寄合で、村会議員の清助に会った時、彼はざっくばらんに自分の意見を話した。「どんなもんだべ、俺、まだ足腰の立つうち柳田村さやるのがいいと思うが、あっちにゃ何でも姪とかが一戸構えてる話でねえか。――万一の時、俺一人で世話はやき・・・ 宮本百合子 「秋の反射」
・・・木村は新聞社の事情には※いが、新聞社の芸術上の意見が三面にまで行き渡っていないのを怪みはしない。 今読んだのはそれとは違う。文芸欄に、縦令個人の署名はしてあっても、何のことわりがきもなしに載せてある説は、政治上の社説と同じようなもので、・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・『春琴抄』における眼を突く時間の早さについてうんぬんしたのも、私にはここに意見があったのである。 ついでに宇野浩二氏の『子の来歴』についても一言生活としての例を挙げるとすると、この作も私は人々のいう如く感心をし、見上げた作品だと思ったが・・・ 横光利一 「作家の生活」
・・・家老は大将のこの性格をはばかって、その主張しようとする穏健な意見を、十分に筋を通して述べることができぬ。したがって不徹底、因循に見える。大将はそれを不満足に感ずる。そのすきにつけ込んで、野心のある侍が、大将の機に合うような強硬意見を持ち出す・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫