・・・戦いに敗れて精神に敗れない民が真に偉大なる民であります、宗教といい信仰といい、国運隆盛のときにはなんの必要もないものであります。しかしながら国に幽暗の臨みしときに精神の光が必要になるのであります。国の興ると亡ぶるとはこのときに定まるのであり・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・あたたの御尊信なさる神様と同じように、わたくしを大胆に、偉大に死なせて下さいまし。わたくしは自分の致した事を、一人で神様の前へ持って参ろうと存じます。名誉ある人妻として持って参ろうと存じます。わたくしは十字架に釘付けにせられたように、自分の・・・ 著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外 「女の決闘」
・・・何と母親の力は偉大ではないか。どの子供も、そう思うのを見れば、母の愛ばかりは、無限であるということが出来る。現在に於て、その力が大なるばかりでなく、たとえ母が死んでしまった後でも愛だけは残るのであります。そして、いつまでも、子供を見守ってい・・・ 小川未明 「お母さんは僕達の太陽」
・・・それは神の偉大を以てしても救うことが出来ないから……」斯うまた、彼等のうちの一人の、露西亜文学通が云った。 また、つい半月程前のことであった。彼等の一人なるYから、亡父の四十九日というので、彼の処へも香奠返しのお茶を小包で送って来た。彼・・・ 葛西善蔵 「子をつれて」
・・・ 天然と歴史とは往々にして偉大なる男性に、超家庭的の性格と使命とを与える。すべての男性が家庭的で、妻子のことのみかかわって、日曜には家族的のトリップでもするということで満足していたら、人生は何たる平凡、常套であろう。男性は獅子であり、鷹・・・ 倉田百三 「愛の問題(夫婦愛)」
・・・「来ているぞ。また、来ているぞ」 ワーシカは、二重硝子の窓に眼をよりつけるようにして、外をうかがった。「偉大なる転換の一年」を読んでいたシーシコフは、頭を上げて、スヰッチをひねった。電灯が消えた。番小屋は真暗になった。と、その反対に、外・・・ 黒島伝治 「国境」
・・・小角は道士羽客の流にも大日本史などでは扱われているが、小角の事はすべて小角死して二百年ばかりになって聖宝が出た頃からいろいろ取囃されたもので、その間に二百年の空隙があるから、聖宝の偉大なことやその道としたところはおよそ認められるが、小角が如・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・かつ大きな人格の光を千載にはなち、偉大なる事業の沢を万人にこうむらすにいたるには、長年月を要することが多いのは、いうまでもない。 伊能忠敬は、五十歳から当時三十余歳の高橋作左衛門の門にはいって測量の学をおさめ、七十歳をこえて、日本全国の・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・「こわうござんす、ママ、ほんとうにこわい」 と子どもが申します。「偉大なめぐみ深い神様、私どもにあわれみを垂れさせたまえ」 とおかあさんは道のわきに行って、草むらと草むらとの間の沼の中へ身を伏せて心の底からいのりました。・・・ 著:ストリンドベリアウグスト 訳:有島武郎 「真夏の夢」
・・・あなたの御尊信なさる神様と同じように、わたくしを大胆に、偉大に死なせて下さいまし。わたくしは自分の致した事を、一人で神様の前へ持って参ろうと存じます。名誉ある人妻として持って参ろうと存じます。わたくしは十字架に釘付けにせられたように、自分の・・・ 太宰治 「女の決闘」
出典:青空文庫