・・・ そこであるとき、巫女を呼んで、どうしたら自分は長生きができるだろうかと問われたのであります。巫女は秘術をつくして天の神さまにうかがいをたてました。そしていいましたのには、これから海を越えて東にゆくと国がある。その国の北の方に金峰仙とい・・・ 小川未明 「不死の薬」
・・・ 拝殿では、白い着物を着て赤い袴をはいた二人の巫女が、一人は鈴を持ち、一人は刀を持って踊っていた。 庄之助はまだ拝んでいる。寿子はふっとおかしくなって、「パパは何をお祈りしているのやろ?」 と、肚の中で呟いた。 庄之助は・・・ 織田作之助 「道なき道」
・・・ 唄合戦の揚句に激昂した恋敵の相手に刺された青年パーロの瀕死の臥床で「生命の息を吹込む」巫女の挙動も実に珍しい見物である。はじめには負傷者の床の上で一枚の獣皮を頭から被って俯伏しになっているが、やがてぶるぶると大きくふるえ出す、やがてむ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」
・・・それが巫女の魔法を修する光景に形どって映写されているようであるが、ここの伴奏がこれにふさわしい凄惨の気を帯びているように思う。哀れな姫君の寝姿がピアニシモで消えると同時に、グヮーッとスフォルザンドーで朗らかなパリの騒音を暗示する音楽が大波の・・・ 寺田寅彦 「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」
・・・河内路や東風吹き送る巫女が袖雉鳴くや草の武蔵の八平氏三河なる八橋も近き田植かな楊州の津も見えそめて雲の峰夏山や通ひなれたる若狭人狐火やいづこ河内の麦畠しのゝめや露を近江の麻畠初汐や朝日の中に伊豆相模大・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
コフマンの「科学の学校」が、神近市子の翻訳で実業之日本社から出版された。訳者からおくられた一冊を手提袋に入れてよそへ出かける電車の中だの、待っている間だのに読んでいるうち、この小さい本をめぐって私の感興はいろいろに動かされ・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・を、同志林は『改造』二月号の文芸時評において、同志神近市子は『日日新聞』月評において、それぞれ反駁、批判を発表した。 私は、これらの反駁、批判を注意ぶかく読んで、自身の論文について多くのことを学んだと同時に、それらの反駁、批判それぞれが・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・そして、私の忠実な僕の芸術家達は、巫女のような洞察で天と人類とのゆきさつを感じ、様々な形で生存の真髄を書きとめ刻みつけ彩って行くのです。……さあ、それでは出かけて、もう一まわり、独特な鼓舞で励ましておやり。仕事は辛い。なかなか容易には捗取ら・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・ 全日本婦人大会というものが神近市子氏、深尾須磨子氏、平林たい子氏によって提案され、クラブ員が個人として招待されたとき、婦人民主クラブが、そういう種類の会の成立に反対したことは、右のような客観的理由をもっていたのである。 日本の真の・・・ 宮本百合子 「三つの民主主義」
出典:青空文庫