・・・けがれたまねは しまいと思うしっかりと 何よりもまず自らに立派で あろうと思う この生きる態度の決意と愛と真実をこの世に信じる心とは女詩人としての竹内さんの一途の道であると思える。そして、この一途の道は永年に・・・ 宮本百合子 「『静かなる愛』と『諸国の天女』」
・・・これまで人が自分達の生長の程度が客観的にどの程度まで行っているか見る力を持っていなくて、而かも一途に恋愛から結婚へ急ぐ事から、所謂恋愛結婚が破綻をした例が多いため、かえって媒酌結婚がいいというような考えかたも生んだのだと思います。結婚出来る・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・ 一かどの芸術家は、男女によらずだれしも或る強情さ、一途さ、意志のつよさ、人生への負けじ魂をもっている。それは人間的な素地として、其々の専門部門への特別な天稟とともに備えている。其々の時代の制約と闘うということも共通である。苦心するのも・・・ 宮本百合子 「「青眉抄」について」
・・・“I know it is one not liable to take infection”とある。 頼られる人というのは、こう云うのだ、と思う。理解はあるが、地につき Matter of Fact な、自分の生活を支配されな・・・ 宮本百合子 「一九二三年冬」
・・・母としての櫛田さんは、ぐるりの人々の親切から出る忠告をやわらかくうけながら、娘さんの一途な心をいじらしく思って、母と娘と心は一つにして婚約の人の帰るのを待っている。若い人々が戦争によって不幸になっている。その日々の気のはり、笑いの中に涙を母・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
・・・一生懸命に暮せばこそ身につきもするそういう女のがんばりについてその一途さにねうちがあるからこそ、一方のひずみとして現れるがんばりは、もっとひろやかで聰くより柔和なものに高められなければならないのだと、誰が、良人のいない、暮しのきつい後家たち・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・野原の急な風……それはなかなか想像のほかで、見る間に草の茎や木の小枝が砂と一途にさながら鳥の飛ぶように幾万となく飛び立ッた。そこで話もたちまち途切れた。途切れたか、途切れなかッたか、風の音に呑まれて、わからないが、まずは確かに途切れたらしい・・・ 山田美妙 「武蔵野」
・・・明治大帝の詔にいう、「官武一途庶民に至るまで、各々そのこころざしを遂げ、人心をして倦まざらしめんことを要す」と。私利を先にして、天下万民に各々そのこころざしを遂げしむる努力を閑却するごときものは、大詔に違背せる非国民である。しかもこの徒が政・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫