・・・その理は十二宮は太陽運行に基き、二十八宿は太陰の運行に基きしものなれば、陽の初なる東とその極なる南とを十二宮に、陰の初の西とその極の北とを二十八宿の星座に據らしめしものと見らるればなり。 されば堯典記載の天文が、今日の科學的進歩の結果と・・・ 白鳥庫吉 「『尚書』の高等批評」
・・・事によると、このような人間の動きを人間の力でとめたりそらしたりするのは天体の運行を勝手にしようとするよりもいっそう難儀なことであるかもしれないのである。 また一方ではこういう話がある。ある遠い国の炭鉱では鉱山主が爆発防止の設備を怠って充・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・ 太陽が動かないで地球が運行しているという事、地球が球形で対蹠点の住民が逆さにぶら下がっているという事、こういう事がいかに当時の常識に反していたかは想像するに難くない。 非ユークリッド幾何学の出発点がいかに常識的におかしく思われても・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
・・・例えば昼夜の交代太陽の運行を観測した時に地球が動いているとするか太陽が動いているとするかはただこれだけの現象の説明をするにはいずれでも差しつかえはない。しかし太陽が地球の周囲を動いているとすると外の遊星の運動を非常に複雑なものと考えなければ・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・二条良基は連歌の句々の推移のありさまを浮世の盛衰にたとえ、また四季の運行に比べている。これは気候変化の諸相のきわめて複雑多様な日本の国土にあって、この変化に対する敏感性を養われて来た日本人にのみ言われる言葉である。それで連歌以来季題が制定さ・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・日月星辰の運行昼夜の区別とかいうものが視覚の欠けた人間には到底時間の経過を感じさせる材料にはなるまい。それでも寒暑の往来によって昼夜季節の変化を知る事はある程度までできる。振り子のごとき週期的の運動に対する触感と自分の脈搏とを比較して振動の・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
・・・プトレミー派の学者は地球を不動と考えて、太陽は勿論其の他の遊星も皆その周囲を運行するものと考えた。後にコペルニカスの地動説が出て前説よりも遥かに簡単に天体の運動を説明し得る事が分り、ケプレル、ニュートンを経ていよいよ簡単な運動の方則で天体の・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・重力があって天体が運行して林檎が落ちるとばかり思っていたがこれは逆さまであった。英国の田舎である一つの林檎が落ちてから後に万有引力が生れたのであった。その引力がつい近頃になってドイツのあるユダヤ人の鉛筆の先で新しく改造された。 過去を定・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・才を呵して直ちに章をなす彼の文筆が、絵の具皿に浸ると同時に、たちまち堅くなって、穂先の運行がねっとり竦んでしまったのかと思うと、余は微笑を禁じ得ないのである。虚子が来てこの幅を見た時、正岡の絵は旨いじゃありませんかと云ったことがある。余はそ・・・ 夏目漱石 「子規の画」
・・・この時には両肩と両腕とでUの字になることが要領じゃ、徒にここが直角になることは血液循環の上からも又樹液運行の上からも必要としない。この形になることが要領じゃ。わかったか。六番」兵卒六「わかりました。カンデラーブル、U字形であります。」・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
出典:青空文庫