・・・幹事改選に壮年のSを当選させる。そして、大衆的懇談会で革新有志二十人をつくる。国鉄。 一般に官業だから政府のつぶれぬうちは従業員の生活は保証されていると考えている。十五ヵ年間以上つとめると一時金なら二千円以上 年金なら一時・・・ 宮本百合子 「大衆闘争についてのノート」
・・・ノビコフ・プリヴォーイが「日本海海戦」を書くことが出来たのは、作家の住宅問題を緩和するために郊外に「創作の家」があったからである。 今日、こういう作家生活全般のために考えられている設備はどんなに発展して来ているであろうか。文学サークルな・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・戸坂潤は、栄養失調から全身疥癬に苦しめられて命をおとした。ひろ子は、これらの話をきいたとき泣いた。重吉と自分とに与えられた愉悦に対して謙遜になった。これらの人々はどんなに生きたかったであろうか、と。 ひろ子は、実験用テーブルの前の円椅子・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ 菊池寛氏が東日の「廻旋扉」でこの作者が昔の浮上ったところをふるい落したことを買っていたが、しかし、あの批評を、作者自身は何とよまれたであろうか。 元よりも落付いたというような局部的なことは当っているかもしれないが、あの批評を全体と・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 日本の人民は、半封建的な当時の社会輿論のなかで、政府が宣伝する開戦理由をそのままのみこんでいたばかりだった。政府の大本営発表を信じたばかりだった。そして、政府が表明した勝利の終曲と、その勝利によってもたらされたと教えこまれた日本の世界・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・ だが、ゴーリキイにとって話したい、打ちあけたい生活の苦痛、錯綜した印象の回旋そのものはやまらない。減りもしない。当時は又夥しくトルストイアンが現れ「眼には憎悪と軽侮とを現わしながら『真理――それは愛です』と叫び」ながら客観的にはポヴェ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・が、ヴォルガの曳舟人足から稼ぎためて、今は九年間も改選なしの職人組合長老にまでなっているワシリー・カシーリンにとって、謂わば渡り職人のようなマクシムに一人娘を呉れてやることなど我慢出来るものではない。ワシリーの日頃の自慢は、ワーリャは貴族へ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・再び、彼らはその平和の殿堂で、その胎んだ醜き伝統の種子のために開戦するであろう。彼らの武器は、彼らのとるべき戦法は、彼らの戦闘の造った文化のために益々巧妙になるであろう。益々複雑になるであろう。益々無数の火花を放って分裂するであろう。かかる・・・ 横光利一 「黙示のページ」
出典:青空文庫