・・・その指令三百十一号には、突発事故が起きたらできるだけ復旧事務を拒否せよ、民同との摩擦を回避せよ、などという文句があったそうです。北海道に偽の指令が流れたことがあった。この指令もおそらくどこかの家宅捜索をすれば、「そこにもあった」ものとして発・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ファッシズムに対して文化を擁護し、新しいヒューマニズムに向って能動であろうとする人々が、自身の文化を抑圧し、運動を骨ぬきとする自分の国のファッシズムそのものとのたたかいは、極力回避しなければならなかったというのは、何という呪うべき矛盾であっ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・学運動がひどい弾圧をこうむってから、当時の文化人・文学者の中には文学の階級的な本質――この基礎の上にこそ現実の反ファシズム運動と平和と文化の守りはたつのであるが――この社会的良心の土台石になるところを回避する傾向が一般的に強くあった。ファシ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・三百名ほどまとまり、十銭の会費完納。一部でヒ行器のエンジン。────────────────────────────────── ◎各工場の建物分離。はじからはじまで三十分もかかる。工場のドアをしめきると、各工場分り出来る。ふだん、・・・ 宮本百合子 「工場労働者の生活について」
・・・ 明らかに責任回避の態度を示す医者をとりかこんで皆がドヤドヤ出て行った。今晩が関所である。誰しもそれを感じた。監房の真中に布団を敷き、どうやら、思いきり脚をのばして独り今野が寝かされている。こんな扱いを留置場でされることは、もう最期に近・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ 本年度の特徴は、一方に素朴な形で文学の政論化が行われ、他の一方で、その政治的な傾向を回避する作品、理論が発生したことにある点は先に触れた。人間の精神の能動的な発動を希望する作家が今日現実に当面している困難の大さは、一朝一夕の解決を不可・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・これだけの経費をまかないながら、MRAの会員が会費を払ったという話はきいたことがない。 世界の疑惑の眼がMRAに集りはじめている。去年第一回のMRAの大会には、アメリカの名士が大勢出席したが、本年のコーの大会にはアメリカの上院、下院あわ・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・教養の方向として「鴎外、芥川的教養は、むしろ彼等にとっては知らねばならぬことの回避を意味し、現代的教養の放棄を意味する。」現代社会は頽廃しているというが、その頽廃の根源を看破することによって、作家は頽廃の性格から救われ、頽廃を克服することが・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・と同様に、現実的な人間像への芸術的肉迫を回避して、自我の意識の中で主観的に或はロマンティックに感得されている知性である。文学の傾向としてこの二者が当時相呼応するものとして現れたのには当然の理由があった。 この前後に小林秀雄が評論家として・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 文学の仕事と文学を職業とするということの間に矛盾があってはならないわけであるけれども、いつしか文学を職業とする方へ主軸が傾きがちで、職業的労作の単純化、統一化、能率化のためには、真の文学精神が回避出来ない筈の両性の波瀾をも、わが家の中・・・ 宮本百合子 「職業のふしぎ」
出典:青空文庫