・・・やっと二年前に文字を書くことを覚えた六十の婆さんに向っても、開放されている。工場内には、はじめ、極く日常の出来事に関する感想を壁新聞に投書しているうち、ふと文学研究会へ出席するようになり、今では正規の労働通信員であると同時に、短篇小説や小評・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・クリスチナに介抱されつつ死ぬ。クリスチナは夫が二人で住もうと云った崖の上の家へ住むために船出するところで終り。ガルボは、いい女優の特長として幅があるし、流動的だし、含蓄があるし、私は好きな女ですが、この平凡で謂わばセンチメンタルな映画を見て・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・すべての出版物は、特別なもののほか、いつもルポルタージュや小説、詩のための場面を、大衆の中からの執筆者に向って開放している。現代の若い作家の大多数は、そのような道をとおって成長して来ている。 小原壮助は、社会主義社会では大衆的な場面を通・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・彼はラネフスカヤと玉突好きのあまりに紳士的な兄とに、桜の園を別荘地に開放することを頻りにすすめる。ラネフスカヤは、そんなことは思っても見ないし、聴く気もない。ぼーっとして、ただ金の入用とそれがどこからか来なければならない、それだけを感じてい・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・ 小学校、工場附属技術学校、いずれも国庫および職業組合の負担で、プロレタリアートの児童のために開放されている。 特にピオニェールは、プロレタリア階級の前衛として社会主義社会建設と拡大とのために必要なあらゆる注意のもとに教育されつつあ・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ マックスシュラーの文庫は、到頭開放しないまま灰燼にしてしまった。 ○何にしろ東京が此那有様なので、種々の注意は皆此方に牽かれ、全滅した小田原、房州の諸町へはなかなか充分手がまわらない形がある。 ○東京は地震地帯の上にあって・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・五年後のきょうの実状をみると、日本の一般には開放的でまた探求心のつよい討議の習慣がつくられるよりも早く、過去の半封建的日本のモラルの標準語であった善とか悪とかいう表現での片づけかたが、流布しそうである。善かさもないものはただちに悪と、固定さ・・・ 宮本百合子 「地球はまわる」
・・・ 俺らあおめえん介抱まじゃあ請合わねえぞ」と云いながら、誰かがひどく彼の肩を揺った。 スースーとちょっとずつ区切りをつけながら、蜘蛛が糸を下げるように、だんだんと真暗な底の知らないところへ体が落ちて行くように感じながら、どうして・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・それは、インドにおける彼女の影響が最高潮にあったとき、ナイチンゲールがクリミヤの経験をどこまでも固執して、炎熱の激しいインドの病院でも、病室の窓々は開放されていなければならないと強硬に主張したために大恐慌を来したという事実である。「彼女の生・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・今日の要求にこたえるべき階級的文学の多面性に対してわたしがどのように積極的で開放的な見解をもっているかということは新日本文学六月号「その柵は必要か」に示されています。 自分として将来にますます多様で豊富な活動を求められているのは当然の・・・ 宮本百合子 「文学について」
出典:青空文庫