・・・今いる家は、町の家作持ちの好意で家賃なしであった。村にも、彼女より立派に縫物の出来る女は、数人いた。植村婆さんは、若い其等の縫いてがいやがる子供物の木綿の縫いなおしだの、野良着だのを分けて貰って生計を立てて来たのであった。沢や婆のいるうちは・・・ 宮本百合子 「秋の反射」
・・・というのは、これが翻訳小説であったならば随分佳作として称讚したのではないかと云うこと。おかしな云い方だが、日本の小説性格形成の過程と、西洋的のとは、根本的に相違があるのではないか。」 大体以上のように武田氏は云われている。 一つの小・・・ 宮本百合子 「現実と文学」
・・・ 佳作三篇 木枯。 鷹美艶 これは小学校の女先生の報告です。特別鋭い観察や感情があるわけではないが、自分の仕事のなかでめぐり会った一情景と感情とを社会の姿として描き出しているところが、一番まとまっていました。書き方が小品と・・・ 宮本百合子 「新女性のルポルタージュより」
・・・この作品は報告文学であるが、気持のそういう方面も健康に全体の中にふくめて書かれているし、応募作品中の佳作である。〔一九三四年十一月〕 宮本百合子 「「第三新生丸」後日譚について」
・・・ 一ヵ月たった十ルーブリで田舎の小学教師をしていたこともあるニェヴェーロフが一九二〇年にはタシケントに行って、類の少い佳作「パンの町タシケント」を書いた。 一九一八年の党員で、フルンゼと一緒に赤色戦線で働き、クバン駐在赤軍政治部長を・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ 相当の家作持ちらしく、若い夫妻である彼等は、決して、近所で名を轟かす、大家の虎屋のようなものではないらしかった。 勿論虎屋と云っても、別に特別な悪行をしかけたこともなかったが、そう云う名の苟且にもある者に対しての心持は、決して朗ら・・・ 宮本百合子 「又、家」
・・・梶は訊いていて、この栖方の最後の話はたとい作り話としても、すっきり抜けあがった佳作だと思った。「鳥飛んで鳥に似たり、という詩が道元にあるが、君の話も道元に似てますね。」 梶は安心した気持でそんな冗談を云ったりした。西日の射しこみ始め・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫