・・・支那人の××ばかりでなく、キキンの郷里から送られる親爺の手紙にも、慰問袋にも××××がかくされてあるのに気づいた中隊幹部は非常にやかましくなってきた。 オンドルは、おだやかな温かみを徐ろに四肢に伝えた。虱は温か味が伝わるに従って、皮膚を・・・ 黒島伝治 「前哨」
・・・などと何の意味も無いような意見を述べても、映画界の幹部たちはひとしく感奮し、ただちに映画界の全従業員を集めて、「実にこの娯楽味を忘れてはなりませぬです」という一場の訓辞をこころみるかも知れないのだから、人の気持って微妙なものだ。 私だっ・・・ 太宰治 「芸術ぎらい」
・・・撮影所の中庭で、幹部の俳優たちと記念撮影をしたのですが、世の中から美男子と言われ騒がれているYもTも、私には、さほどの美男子とも思われず、三人ならぶと、私が一ばんいいのではなかろうかというような気がして、そこでこの大袈裟な腕組という事になっ・・・ 太宰治 「小さいアルバム」
・・・はじめは医者も私の患部の苦痛を鎮める為に、朝夕ガアゼの詰めかえの時にそれを使用したのであったが、やがて私は、その薬品に拠らなければ眠れなくなった。私は不眠の苦痛には極度にもろかった。私は毎夜、医者にたのんだ。ここの医者は、私のからだを見放し・・・ 太宰治 「東京八景」
・・・ ざッざッざッという軍靴の響きと共に、君たち幹部候補生二百名くらいが四列縦隊で改札口へやって来た。僕は改札口の傍で爪先き立ち、君を捜した。君が僕を見つけたのと、僕が君を見つけたのと、ほとんど同時くらいであったようだ。「や。」「や・・・ 太宰治 「未帰還の友に」
・・・いったい二十世紀の文明国と名乗る国がらからすれば、内閣に一人や二人のしかるべき科学大臣がいてもよさそうであり、国防最高幹部にすぐれた科学者参謀の三四人がいても悪いことはなさそうに思えるのであるが、これも畢竟は世の中を知らぬ老学究の机上の空想・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・高坂はやはり印刷工組合の幹部で、自分で印刷工場も経営している。一方では憲政会熊本支部にもひそかに出入している男であるが、小野、津田、三吉の労働幹部のトリオがしっかりしているうちは、まだいうことをきいていた。「きみィ、応援するのやろ?」・・・ 徳永直 「白い道」
・・・一週間、全一週間、そのために寝たっきり呻いていた、足の傷の上にこの体を載せて、歩いたので、患部に夥しい充血を招いたのに違いなかった。 ――どこにいるんだか、生きているんだか死んでるんだか知らないが、親たちが此態を見たら―― と、私は・・・ 葉山嘉樹 「浚渫船」
・・・プロレタリア文学における新幹部の養成は、技師、熟練工の養成と同様、重大な関心事となっている。 一九三〇年の七月、全同盟共産党第十六回大会の会場で「ラップ」代表キルションが行った報告中には、既に全然新しい層から生れて来た作家=労農通信員、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・を唱え、文壇を出たいという心持を何処にか持っている作家達は、年配から言っても所謂少壮の幹部どころの年齢であり、文学者の従来の生活には少なかった政治家、軍人等との接触の物珍らしさは、一部の作家が過去に於ては国際的な政治経済知識を著しく欠いてい・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
出典:青空文庫