・・・近ごろ帰一協会などでは、それを子供のために悪いと言って気づかっている。 寒山詩が所々で活字本にして出されるので、私のうちの子供がその広告を読んで買ってもらいたいと言った。「それは漢字ばかりで書いた本で、お前にはまだ読めない」と言うと・・・ 森鴎外 「寒山拾得縁起」
・・・ 訳本ファウストが出ると同時に、近代劇協会は第一部を帝国劇場で興行した。帝国劇場が五日間連続して売切になったのは、劇場が立って以来始ての事だそうだ。そこで今日まで文壇がこの事実に対して、どんな反響をしているかと云うと、一般にファウストが・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
・・・神は再びよみがえらなくてはならぬ。それがキリスト再臨によって証せられるか否かは我らの知るところでない。我らは神を知らない。しかし我らの生が神と交通し得るものであることは疑うわけに行かぬ。神は教会の神として、教理の神として死んで行った。しかし・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
日本文化協会の催しで文楽座の人形使いの名人吉田文五郎、桐竹紋十郎諸氏を招いて人形芝居についての講演、実演などがあった。竹本小春太夫、三味線鶴沢重造諸氏も参加した。人形芝居のことをあまり知らない我々にとってはたいへんありがたい催しであっ・・・ 和辻哲郎 「文楽座の人形芝居」
出典:青空文庫