・・・職場で働いているが、こういう人々はもっと自分の技術を高めて、ソヴェト同盟が最も必要としている技師になり、皆の役に立とうと、若がえって健気な勉強をやっているのである。 わたしは、工場を見ているうちに一歩一歩と、水浴びでもした後のようにいき・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・何処かの工場でアメリカ技師を招聘した。技師は職工を何人かつれて来て、中に黒人労働者もいた。白人職工が何かのことで、議論する間もなくいきなり手を上げて黒人の仲間を殴った。彼は故郷自由の国アメリカ、黒人に対する私刑 オムスクから二時間ば・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・ソヴェトではあらゆる生産が計画的生産であるから、管理者は、工場内の専門技師、工場委員会などを確りと統制し、過渡的なソヴェト社会の具体的困難を突切って、社会主義的な生産を高めて行かなければならない。ソヴェトは、この工場管理者には、出来るだけ労・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・教授や技師や学者たちの間から篤志操作者が募集された。 けれどもX光線の設備に、なくてならない電気さえひかれていないような野戦病院へ殺到して来る負傷者たちをどうしたらいいだろう。キュリー夫人はある事を思いついた。フランス婦人協会の費用で光・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ ゴーリキイが作家を呼んで「心の技師」といっている。心のいきさつを描きたいことは全作家のひとしき願望ではあるが、著書もそれが社会性乏しくきわめて個人的なものであることを認めている反省的心理叙述を、横光利一のみでなく、私も一人の作家として同じ・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・事務所のわきにフォードの幌形自動車がとまって、踏段に片足かけ、パイプをほじっているのは、縞シャツのアメリカ技師だ。洒落た鎌と槌との飾りをつけた小屋に、国立出版所の売店が本をならべている。―― 大体ソヴェト同盟の五ヵ年計画は、いろいろと予・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ いま作品の名をおもい出せませんが赤穂義士の仇討に対してそれを唯封建的な忠義の行為と見ず、浪士たちの経済的事情やその他の現実的いきさつを主眼として扱ったものもあったようです。 これから森田氏がどういう作品をかかれるか知らないけれども・・・ 宮本百合子 「心から送る拍手」
・・・ソーッと義歯をかみ合せて見る時みたいにやって見るとすぐつまさきから頭のつむじのてっぺんまでズキン――すぐ涙がスーッとにじみ出て来る。お正月にこの歯が悪くって血脇さんに行ったんだけれ共あの色の生っちろい男がむしずが走るほど気に食わなかったで十・・・ 宮本百合子 「つぼみ」
・・・不折まがいの奇抜な字で、余興と題した次に、赤穂義士討入と書いて、その下に辟邪軒秋水と注してある。 秋水の名は私も聞いていた。電車の中の広告にも、武士道の鼓吹者、浪界の泰斗と云う肩書附で、絶えずこの名が出ているから、いやでも読まざることを・・・ 森鴎外 「余興」
・・・先日も優秀な技師がピストルでやられました。それは優秀な人でしたがね。一度横須賀に来てみて下さい。僕らの工場をお見せしますから。」「いや、そんな所を見せて貰っても、僕には分らないし、知らない方がいいですよ。あなたにこれでお訊ねしたいことが・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫