・・・なんぞと云って、電話で喧嘩を買ったのである。今は大分おとなしくなっているが、彼れの微笑の中には多少の Bosheit がある。しかしこんな、けちな悪意では、ニイチェ主義の現代人にもなられまい。 号砲が鳴った。皆が時計を出して巻く。木村も・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・ツァウォツキイはえらい喧嘩坊で、誰をでも相手に喧嘩をする。人を打つ。どうかすると小刀で衝く。窃盗をする。詐偽をする。強盗もする。そのくせなかなかよい奴であった。女房にはひどく可哀がられていた。女房はもとけちな女中奉公をしていたもので十七にな・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
・・・昼日中喧嘩して!」とお留は口を入れた。「お母ア、黙っとりゃええんじゃ。」「秋公頼むわ。どこへでもええで寝さしてくれよ。」と安次は云った。「ぬかしてよ。汝や汝で、何ぜ俺とこを母屋やなんてたれるのや。どこで聞いて来た。他家んとこへ来・・・ 横光利一 「南北」
出典:青空文庫