・・・ ファシズムというと、わたしたちはすぐ戦争中のままの形で超国家的な大川周明の理論や、憲兵の横暴や、軍部、検事局その他人民を抑圧した天皇制の機構全体を頭にうかべて、なんとなしその全体に体当りで抵抗するのがファシズムへの抵抗という感じをもっ・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・思想検事が「ここにおいて被告はマルクス主義思想を抱懐するにいたり」と法廷でよみあげる告発の文書の文句とは、まるでちがった本質と道ゆきとをもつことである。「伸子」の続篇を書きたいと思いはじめたのは、この時分からのことである。しかし、この願・・・ 宮本百合子 「あとがき(『二つの庭』)」
・・・それから、私は、当時、保護観察所と云って、治安維持法にふれたことのある人々を、四六時中つけまわして思想的生活的に制約することを仕事にしていた役所へ行って、検事であるその所長に会って話した。当時はまだ、作家の生活権を奪うということからの抗議に・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・民主主義文学運動がはじまってから蔵原惟人、小林多喜二、宮本顕治にふれて、当時の検事局的に歪曲された「政治的偏向」批判をそのままくりかえし、これらの人々の活動の積極面――プロレタリア文学運動の成果の抹殺が試みられた。それは、客観的には、非民主・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・かつて保護観察所長をしていた思想検事の長谷川劉が、現在最高裁判所のメムバーであって、さきごろ、柔道家であり、漫談家、作家である石黒敬七、富田常雄などと会談して、ペン・ワン・クラブというものをつくることを提案している。名目は、腕力のあるペン・・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・あとをまだまざまざと感じているヨーロッパの人々、特に青年はジャックの上に、自分たちの物語のいくつかの断片を実感し、不安に空気をゆすぶっている嵐の前兆に対して自分の青春の価値と意義を最も自覚のある方法で堅持しようとしたのであった。 ヨーロ・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・ この不幸な出来ごとを、東京検事局では、「一般のお母さんへの警告」として、過失致死罪として起訴した。殺人電車、赤ちゃん窒息という見出しで新聞はこの事件を報じた。そして、この不幸は母親ばかりの責任ではなく、我もろとも十分に知りつくしている・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・これからの幾波瀾のなかで、あなたの鉛筆、そしてわたしたちすべてのものの鉛筆が、真に懐中するに足りるものであるためには、どれだけかの勉学と堅持とがいることでしょう。詩人よ、すぐれた天質を高めよ。詩が理性のうたであるときいて、しりごみした旧い詩・・・ 宮本百合子 「鉛筆の詩人へ」
・・・日本のわたしたちが国連を支持するとならば、それは国連の良心を支持し、それを堅持させるように努力することしかない。国連憲章は第二条第四項で、領土保全と政治的独立に対して武力をもって脅威することを禁じている。第七項にその国の内政に干渉する権能を・・・ 宮本百合子 「世界は求めている、平和を!」
・・・そして、西ヨーロッパの明日の運命に対して、最も重大な関係をもっているフランスの民主精神堅持のために、こんにち根づよい芸術家である彼と彼の文学を愛する人々は、どのように働いているかということである。〔一九四九年八月〕・・・ 宮本百合子 「脈々として」
出典:青空文庫