・・・笑った彼女の口元からちらりと金歯の光ったのや、硝子ケースの中にパイプや葉巻の箱を輝やかせている日光が、いかにも春めいた感じを藍子に与えた。「おいでですか?」「ええ、今日はいらっしゃいますよ、さあどうぞ」 店の横にある二畳から真直・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・笑った彼女の口元からちらりと金歯の光ったのや、硝子ケースの中にパイプや葉巻の箱を輝やかせている日光が、いかにも春めいた感じを藍子に与えた。「おいでですか?」「ええ、今日はいらっしゃいますよ、さあどうぞ」 店の横にある二畳から真直・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・普通携帯品といわれる観念で、それらの品々をあずけた人が、そこから入った柵のところで警官に体をしらべて貰って、困った表情でいるのを見ると、眼鏡のケースを片手に握って当惑しているのであった。へえ、そうですか、こんなものもねえ。そういいながら、黒・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・普通携帯品といわれる観念で、それらの品々をあずけた人が、そこから入った柵のところで警官に体をしらべて貰って、困った表情でいるのを見ると、眼鏡のケースを片手に握って当惑しているのであった。へえ、そうですか、こんなものもねえ。そういいながら、黒・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・父は夜になると火薬をケースに詰めて弾倉を作った。そして、翌朝早くそれを腹に巻きつけ、猟銃を肩に出ていった。帰りは雉子が二三羽いつも父の腰から垂れていた。 少いときでも、ぐったり首垂れた鳩や山鳥が瞼を白く瞑っていた。父が猟に出かける日の前・・・ 横光利一 「洋灯」
・・・父は夜になると火薬をケースに詰めて弾倉を作った。そして、翌朝早くそれを腹に巻きつけ、猟銃を肩に出ていった。帰りは雉子が二三羽いつも父の腰から垂れていた。 少いときでも、ぐったり首垂れた鳩や山鳥が瞼を白く瞑っていた。父が猟に出かける日の前・・・ 横光利一 「洋灯」
出典:青空文庫