・・・一九四九年度の公安条例。九原則。人員整理、失業とのたたかい、越年資金闘争のすべては「その大部分がいかにもあいまいで、うそではないにしても、ほんとの程度がわからないといったものであります」という種類の社会現象だったろうか。二十五万人の女子大学・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・もしかりに、漠然と公安を乱すおそれがある出版物はとりしまるというような新取締法をつくったならば、政府はよろこび勇んで、政府を批判し彼らの良心を眼覚めさすすべての出版物を禁止しはじめるであろう。情報局が戦時中すべての戦争反対の言論を禁止したよ・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・で第一、警察官の民主化の実行、第二、地方刑罰条例の濫発への警告――売春等取締条例・公安条例など「国会で決定せず、地方自治体できめしかもムヤミにつくりたがる傾向」を批判していた。一九四八年に人権擁護委員会が置かれてから取扱った件数八八一七件。・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・一日の中、大部分は、其部屋の中に生活するのですから、客間、食堂、寝室などと云うものは、皆、勉強部屋での、深い緊張を緩める処、やや疲れた頭の慰安処として、考案されなければならないのです。 私は、直射する東や南の光線は大嫌いですから――・・・ 宮本百合子 「書斎を中心にした家」
・・・戦時利得税をいずれ払わなくてはならず、しかも、大財閥に対してのように、政府が様々の法式を考案して、とり上げた金をまた元に戻してよこしてくれる当もない。戦時成金ばかりが、昨今、使ってしまえという性質の金銭をちらしているのである。 つい先頃・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・ 斎藤国警長官の進退をめぐって政府と公安委員会が対立し、公安委員会は斎藤氏の適格を主張し、ついに、政府は静観となった。この事件も、下山氏の死にからんで強行されようとした何かの政界の失敗であり、この失敗そのものが、逆に下山氏の死の微妙ない・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・白さは、働きそのものを遊戯化しポーズ化した連想からの思いつきによってもたらされるものではなくて、やはり真率に働きの目的と必要とに応えて材料の質も吟味された上、菅笠で云えばその赤い紐というような風情で、考案されて行くべきなのだろうと思う。・・・ 宮本百合子 「生活のなかにある美について」
・・・この間来なすった時、明治神宮の前できび団子でもこさえて売ろうかって云いなさるから、そりゃあ面白い、うんとおやりなさい、後援してあげましょう、と云いましたが、まさか、実際にそれをするのはいやなんですね。考案は、大きなのや小さなのや種々雑多なの・・・ 宮本百合子 「一九二三年冬」
・・・新しいとりしまりの法律といえば、ワイセツ罪はもう存在しているのだから、結局公安を保つとかいう文句がつかわれることになりましょう。そうだとすれば、「公安を害する」というおそろしい言葉が犯して来た罪業の数々を、わたしたち文学者は忘れることが出来・・・ 宮本百合子 「「チャタレー夫人の恋人」の起訴につよく抗議する」
・・・すると築地署の臨監が「公安に害ありと認め興行届認可を取消す」と怒鳴った。まだ歌一つうたいもしないうちに、何が公安に害ありでしょう! 余りいわれない弾圧だ。若い婦人が大部分を占める聴衆は坐席から立ち上りはしたが動こうとはしない。警官がそれを邪・・・ 宮本百合子 「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」
出典:青空文庫