・・・たちの多くは、そういう危険に我とわが身、わが芸術を曝すだけの社会感覚をもたず芸術至上の境地にこもって、身辺のことを熱心に描きつづけているために、変に政治化した作品、非文学的な素材主義にあきたりず文学の香気というものを作品に求める心が、おのず・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・更にその名も書かれず、事業も表面には記録されないような場所と役割で、光輝ある人民解放運動のために一生を忠実に働いたインテリゲンツィア婦人は決して十人や二十人ではなかったのだ。レーニン夫人のクループスカヤも小学校の女教師をしながら、レーニング・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・そういう自分の心があるとき自分に涙をこぼさせるものであったとしても、やはり「私の現在の生活の延長と誇張とに釘づけにされ、自分にとって真実な豊かな生活をきずく好機会を永久に逸し去ること」はとてもできないとわかっている。フロレンスは、苦しくても・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・編輯後記を見たら、旧作「濃淡」に骨子を得云々とあり、作者もそのことを附記されている。 旧作が生憎手元にないので比較して作者の新たな意企や技術の上での試みを学ぶことが出来ないのは残念である。「新胎」について技術的な面で感じることは、現実の・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 後記 一九四九年四月。選集第十巻に収録するためにこの文章をよみかえした。そして、作者と読者とのためにこんにちでは、短い附記の必要を感じた。川端康成は一九一四年ころから作品をかきはじめ、一九二二年「伊豆の踊子」によって、独特・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ゴーリキイは歴史の正しい進展のために文学の仕事をもって献身し、その歴史の光輝ある達成のうちに作家としての彼自らをも完成させた。歴史性と箇性・才能との相互関係について未曾有の典型を示しつつ、彼の六十八年の生涯を終ったのである。 マクシム・・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・五月号『働く婦人』編輯後記に短かく報道されていますが、中耳炎になった彼が警察から入院させられた済生会病院は、ブルジョア慈善病院らしくろくな手当てもしないばかりか、病がすすみもう生命が危いところまで行ったと知ると、責任を胡魔化すため「君は三日・・・ 宮本百合子 「ますます確りやりましょう」
・・・男性が最もよく女性の感化を受けた時、彼は天性の最善、最美な光輝を現します。それと同じに、女性は男性の正しいよい影響を受けると、彼女の生命の一番目覚ましい発育を遂げるのです。私共は、それ故、異性の間に生れる特殊な雰囲気は、人生に大切な一種の創・・・ 宮本百合子 「惨めな無我夢中」
・・・文学的な香気というものはまことに乏しい。けれども、作者がその人物に云わそうと意図している範囲では噛んでふくめるように云っているから、分り易い。平明であるというねうち高い特長とともに、この作者の持ち出す人間の言葉にも、人間そのものにさえ性格的・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・萬縣での流血の闘争など、もっと色彩づよく描写され、同時に揚子江の壮大な自然や白人の日常生活の姿などが遠近をもって描き出されたら、この作品は一層面白く、芸術的な香気をもたかめたことであろうと思われる。作者は、取扱おうとしている現実にはよく通じ・・・ 宮本百合子 「「揚子江」」
出典:青空文庫