・・・もちろんこの場合にも文化材である用紙割当の公正と民主性がいわれているが、主務大臣の野溝はいちはやく利害関係のある地方新聞に対して、いまにいくらでも紙はまわしてやる、と失言して、問題をおこしている。用紙割当がこのような保守と利慾の権力で官僚統・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・ 斯ういう事情があっても、良人が自分を虐待するという為に訴訟し弁護され、勝訴するのは、公正な事でございましょうか? C先生 私は、人間の魂に余り「知」の不足する事を涙とともに悲しまずには居られないのでございます。 此の事件を・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・働かす条件が悪くても、どうせまだ親がかりだなどといういいわけで、職場の設備の悪いことも、厚生施設のないことも、第二の問題のように扱います。 働く婦人自身が結婚までとピリオドをうつ気分には、働きそのものの発展性がないこと、独立的生計が営め・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・テラス、ロマンス類が、もとの軍情報部に働いていた人をやとい入れて、戦時秘史だの反民主的な雰囲気を匂わせはじめると、その風潮は無差別にぱっとひろがって二・二六事件記事の合理化された更生から文学にまで波及し「軍艦大和」のように問題となる作品をう・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
・・・ 商人の公正な商売道徳が新しく立てられなければならないことが云われて、それはそのとおりなのだけれど、それだけ一方的に、モラルの面から強調されても商人の身になれば云いたいことがあるのだろう。商人も今日の社会の新しい状態に入り切れずにいるし・・・ 宮本百合子 「主婦意識の転換」
・・・それは公正で紳士的だと云うのを表看板にしているイギリスの第一流新聞タイムスが、書いてることを見たって分る。そのことも階級的立場からはっきり知るのだ。 ――ほかに鬱はらしのしようがなかったんだな、きっと。 ――それも一つだ。その時分、・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・例えば雑誌の編輯でも校正の最後の日は徹夜さえするでしょう。男の人と全く同じような働き方だと思います。それが、女であるだけ疲れかたが違ったところにあり、働いている間身装りにしろ男の人の方が働き易い自由さを持っていると思う。和服の帯付きで働いて・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・万葉集をみると、当時は支配権力が決して後世のように確立していなかったこともうかがえるのである。 万葉集の時代が過ぎて文学のうえで婦人が活躍した藤原時代が来る。王朝時代の文学は、主として婦人によってつくられたということがいわれている。栄華・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・バルザックの偉大さにしても、西欧のリアリズムにしても、バルザックが彼の時代のフランス・ブルジョア社会の限界・個性の限界としてその作品にくっきり映している歴史性は、公正な評価をもって見られるべきである。こんにちの歴史ではより明確にされている社・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・八月八日に「はじめて面会を許されて弟に会いましたが、そのとき立ち会った木村検事にわたしが、公正な立場でやっていただきたいというと『宮原係の検事としてききずてならない』と酒を飲んだように顔面を紅潮させて、両脇腹に手をあてがって『でっちあげるの・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
出典:青空文庫