・・・のなかに、キドウセイを軌道性と誤記した筆記のあやまちが、そのまま校正からもれていたことは、平野氏の話を一層おかしなものにした。わたしのあの話の十一頁十二頁とよめば、キドウ性は機動性であることが察しられないことはないと思う。少くとも、これは変・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・一つの書いたもののなかから、偶然の誤記を機会に、書いてあることとはまるで方向のちがった結論をひき出して、自身のコンプレックスを展開することは、公正でないし、文学というものの客観的な真実を尊重する本質もふみにじっている。『近代文学』十月号・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・ 私は自分の居る所の番地も知らずに居る罪のない後生願いの婆さんの事を可愛らしく思い出しながら、大変愉快そうに頬を火照らして微笑して居る弟の顔を見て居ました。 四月に大塚の一年に成った彼は今お伽噺に魂を奪われて居るのです。 生れつ・・・ 宮本百合子 「小さい子供」
・・・ 法律は公正であると信じこむように教育されているが、階級社会で実際に法律がどうつかわれるかという実例はサッコ・バンゼッティの事件ばかりではない。五月三十日の東京人民大会でとらえられた八名の若い人たちの罪にしても、いろいろ考えさせる。新聞・・・ 宮本百合子 「動物愛護デー」
・・・ 一昨年の十月から昨年の二月まで、労働攻勢が強くて二月にその頂点をきわめました。この期間日本中にストライキの波が高まり、賃金は上りました。ところが二月のゼネストの計画が流れたあと、何故組合内にいわゆる物とり主義に対する批判ということが始・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ 一九五〇年〔渡辺泰輔宛〕 校正をおかえしいたします。 直したという以上にたくさんのところを削り、まことに御迷惑をかけました。 辞典類をかきなれないものですから、よみかえしてみると、これ一つで一つの文学史になってしま・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・ 腹を立てた様に太い声を出して云うのである。後生願いの良い婆さんだから私に、本願寺にお参りさせて呉れろと云う。案内して呉れと云うのか私の金で連れて行ってくれと云うのか分らない。 一つ二つ短かい距離を行く間に「あみださま」に関した・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・明方まで仕事をつづけて「少しく運動の必要を感じ、書いた原稿を手にして自分で印刷屋へ足を運び、校正の仕事に携った。それも彼が常に八回乃至十回の校正を必要としたからである。」バルザックは自分の文章に自信がなかったばかりでなく、「彼は最初ただ小説・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・現代反動政府とそれを支配しているブルジョアとは、あらゆる機会に坊さん、いわゆる道徳家牧師を動員して世界経済恐慌によって起るプロレタリアの攻勢を何とかして胡麻化そうと、かかっているのです。反宗教運動は、プロレタリア文化運動の一翼として、当然起・・・ 宮本百合子 「反宗教運動とは?」
・・・に書かれているブルジョア婦人雑誌に対する態度は、プロレタリア文化の尖鋭な伝播者・組織者としてのわれわれの刊行物と、ブルジョア文化攻勢の具体化としての婦人雑誌との相互的関係を、十分弁証法的に、レーニン主義的に把握しているとはいえぬ。「発刊の言・・・ 宮本百合子 「婦人雑誌の問題」
出典:青空文庫