・・・には亀戸の小さい紡績工場で闘争する女工だけを描いているとする、または九州の炭坑罷業を描いているとしても、その主題がはっきり資本主義第三期の世界経済恐慌との内国的関係において、プロレタリア・農民の政治的攻勢の展望のもとに把握、表現されていれば・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・そしてそのことによって進歩的読者に社会主義の具体的図絵を与え、党の意義を普及しつつある作家をその事実にたって公正に評価することが他の党員作家にとって有害であるということは理解しにくいことです。文学における政治の優位ということは文学運動と作家・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・打ちあけて何も話さず、てんから藍子が尾世川の何かでありでもするように、「ねえ、あなた。後生だから一目尾世川さんに会わして下さいよ。あなたの御迷惑んなるようなこと、きっとしませんから、ね? 一目会わして下さい」 躙りよって来て藍子の膝・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・ 貧しいこの大学生はカザンの新聞社へ夜間校正係として働き、一晩十一カペイキずつ稼いで来た。ゴーリキイに稼ぎのなかった日、この心を痛ましめる睦しい同居者たちは四切のパンと二カペイキの茶、三カペイキの砂糖だけで一日を凌ぐことも珍しくない。ゴ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・貧しいこの大学生はカザンの新聞社へ夜間校正係として働き、一晩十一カペイキずつ稼いで来た。ゴーリキイに稼ぎがなかった日は、この心を痛ましめる睦しい同居者たちは四片のパンと二カペイキの茶、三カペイキの砂糖だけで一日を凌ぐことも珍しくない。ゴーリ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・マリーナは、「ね、後生だからダーシェンカ」 心臓でも搾られるように云って、ダーリヤの手頸を捕え、自分の胸に押しつけた。「どうか私がただの吝嗇坊で、お金のことをやかましく云うのだと見下ないで下さいね? 私あなたがたが黙ってても心で・・・ 宮本百合子 「街」
・・・却って、このことがきっかけとなって、友松円諦のような者や、農村自力更正修養団の思想やがはいりこむことも予想される。 この間、プロレタリア作家の徳永直と、これはプロレタリア短歌を専門とする渡辺順三とが、東北飢饉地方を見学に行った。私は断片・・・ 宮本百合子 「村からの娘」
・・・色鉛筆を片手に、無駄と思うところ数行ぐるりとしるしをつけ、校正のようにトルと記入し、よいと思うところには傍線を附す。至極深刻な表情を保って居る。 修善寺より乗合自働車。女の客引が客を奪い合う様子、昔の宿場よろしくの光景なり。然し、どれも・・・ 宮本百合子 「湯ヶ島の数日」
・・・が、「放送効果の立場よりする聴衆の必然性の吟味或は社会的公正、文化的妥当の見地より指導方針の検討が加えられなければならない。」そして、官営である日本の放送事業は、個人経営のアメリカなどとは違う。「その組織経営の優秀性は」「世界各国の放送事業・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・敬意と、女がとりも直さず母なのであるという事実に立った母性の保護が、社会の全面にゆきわたっているとはまだいえない実際は、現在女子労務者たちが改善を切望している点が、賃銀関係ではなくて、むしろ作業条件と厚生施設に関するところにある事実に現れて・・・ 宮本百合子 「若い母親」
出典:青空文庫