・・・ 三原山の投身自殺でも火口の深さが千何百尺と数字が決まれば、やはり火口投身者の中での墜落高度のレコードを作ることになるかもしれない。しかし単に墜落高度というだけのレコードならば飛行機搭乗者のほうにもっと大きい数字がありそうである。 ・・・ 寺田寅彦 「記録狂時代」
・・・この点を確かめるには、実験室内でできるだけ気流をならしておいて、その中で養ってあるとんぼにいろいろの向きからいろいろの光度の照明をして実験することもできなくはない。しかし実験室内に捕われたとんぼがはたして野外の自由なとんぼと全く同じ性能をも・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
・・・ いちばん安全な方法はやはり野外でたくさんの観測を繰り返し、おのおのの場合の風向風速、太陽の高度方位、日照の強度、その他あらゆる気象要素を観測記録し、それに各場合の地形的環境も参考した上で、統計的分析法を使用して、各要素固有の効果を抽出・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
・・・というのは最高度の軽侮を意味するエピセットである。これは彼らが腐肉や糞堆をその定住の楽土としているからであろう。形態的にははちの子やまた蚕ともそれほどひどくちがって特別に先験的に憎むべく賤しむべき素質を具備しているわけではないのである。それ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・のすぐ隣のベータ・ライラの面白い光度の変化を注意させた。それから夜ごとに気を付けて見ていると果して天文雑誌にある予報の通りに光が変るという事実が子供の頭にどういう風に感ぜられたか、それは私には分らなかった。 空を眺めているうちに時々流星・・・ 寺田寅彦 「小さな出来事」
・・・事によるとこの尺八は音の高度を示すものかもしれない。 蘭領インドの島にシグムバワという笛があり。サモアにシヴァオフェという竹笛がある。 ペルシアのした笛にシャクというのがある。またラッパ、むしろトロンボンの類でシャグバットサクビュト・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・磁石とコンパスでこれらの雲のおおよその方角と高度を測って、そして雲の高さを仮定して算出したその位置を地図の上に当たってみると、西は甲武信岳から富士箱根や伊豆の連山の上にかかった雲を一つ一つ指摘する事ができた。箱根の峠を越した後再び丹沢山大山・・・ 寺田寅彦 「春六題」
・・・それで問題も物理的に明白な意味のあるものにするには、例えば海面における光度の百分一とか千分一に減ずる深さ幾何とかいう事にしなければならぬ。このように問題の分析が出来てしまえば、それから一つ一つの問題について別々に研究し、その結果を綜合して初・・・ 寺田寅彦 「物理学の応用について」
・・・ 銅色をした太陽が今ちょうど子午線を横切っているのだが、地平線からの高度が心細いように低い。 私はその時何という理由なしに「もういよいよ世の終りが近づいたのだ」と思う。 向うの方から大勢の群集が不規則な縦隊を作って進んで来る。だ・・・ 寺田寅彦 「夢」
・・・空はまっさおに、ビルディングの壁面はあたたかい黄土色に輝いている。 こういう光景は十年前にはおそらく見られないものであったろう。この二人はやはり時代を代表している。 ジャズのはやるゆえんである。 四 一週・・・ 寺田寅彦 「LIBER STUDIORUM」
出典:青空文庫