・・・、明治二十年末期の『文学界』のロマンティシズムがその踵をしっかりとつかまえられていた封建の力を、殆どそれなり背面にひっぱったまま大正末から昭和の十年間という時期をも経て、今日の、或る点から云えば極めて高度な近代の秩序に適応していてしかも本質・・・ 宮本百合子 「職業のふしぎ」
・・・襖に当って屈曲した三尺幅の光の波が、くっきり斜に、表現派の舞台装置のように、光度を違えて、模様を描いて居る。 ◎ 宮原氏と原稿の話をした時、二十四字づめを使って居ると云うと 彼は「それ丈は一寸違って居・・・ 宮本百合子 「一九二三年夏」
・・・夫婦愛より歴史性の古いと云われているその母性感情の故に、最も高度に錯綜した社会諸関係の辛苦にふれているという深刻な事実の裡にこそ、このバッハオーフェンの一巻が古典として存続し得る必然がかくされているというのは、意味深いことであると思う。・・・ 宮本百合子 「先駆的な古典として」
・・・自身も工場農村に働いている連中だから、云わば学校と工場農村にある青年達の気質も生活様式の基礎的な部分でも一つのもので大した差別は無い、学校内の倶楽部ではさっき云った工場倶楽部内の文化活動が一そう活溌に高度に行われているという訳だ。・・・ 宮本百合子 「ソヴェト「劇場労働青年」」
・・・また、保田与重郎君の幻想と小宮豊隆氏の高度な知的ディレッタンティズムが肩と肩とを抱き合わせ得ないことも自明である。さらに長谷川如是閑氏が、文化の発展との関係において民衆のもつ自由と統制をどう見ているかということと、林房雄氏の日本観との間に或・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
ツワイクの「三人の巨匠」p.150○ワイルドがその中で鉱滓となってしまった熱の中でドストイェフスキーは輝く硬度宝石に形づくられた。○災厄の変化者、あらゆる屈辱の価値の変革者としてのドストイェフスキー。○彼は自己・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・ ツワイクがドストイェフスキー論の中に言っているとおり、「ワイルドがその中で鉱滓となってしまった熱の中でドストイェフスキーは輝く硬度宝石に形づくられた。」 巨人の檻 バルザックは、徹底的に、雄渾に、執拗・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
出典:青空文庫