・・・ 左翼の歴史が何故そのように急な興隆と急な退潮とを余儀なくされているかということについて、詳細にここで触れる必要のないことであろうと思うが、これ等の重大な歴史の相貌は悉く、日本がヨーロッパよりおくれて、而も独自な事情のもとに近代社会とし・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 近代文学胎生期としての明治初年の文学に交流していた上述の二様の流れは、逍遙の英文学研究の業績、二葉亭四迷の当時にあっては驚くべき心理小説の後をうけて硯友社の活動の裡にも謂わば併流している。前代からの遺産としての戯作者文学の伝統は、今日・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・福沢諭吉が提案した明治年代の日本における資本主義興隆期にはそれを行わず、半封建憲法・民法で押してきた。その結果、わたしたちの日常生活のあらゆる面と感情とが、古きものへのたたかいと同じ刹那に、帝国主義末期の現象であるさまざまの矛盾と衝突し、そ・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・日本の明治以来の興隆期の文化は、夏目漱石でその頂点に達し同時に漱石の芸術には、今日の日本を予想せしめる顕著な内部的矛盾が示されている。 寺田氏の文化性というものも、日本のその時代の特色を多くもっていると思う。社会的な境遇から云っても、寺・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ 科学と文学の交流 よく科学者に珍らしい詩人的要素とか審美的な感覚とかいう表現が、一つの讚辞として流用されている。故寺田寅彦博士の存在は、文化の綜合的な享楽者または与え手という意味で、多数の人々の敬愛をあつめて・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ 古人がすでにその風流の途上で看破している自然と人間の主観との以上のような交流は、特に日本古典文学の領域の中でおびただしい表現をもっているのである。然し、人間の主観的な感情の鏡によって、自然の姿が悲喜さまざまに観られ感受されると同時に、・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・何をどうとも云えないが、面白いという思いがその先生と自分との間を交流するようで、私はいつも謹んで一生懸命であった。 五年生になって、千葉先生は教育をうけもたれ、心理学の講義がはじまった。ごく初歩の概論だったにちがいないけれども、この学課・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・アメリカの文化との交流、中国の文化の正しい再認識と評価。イギリスの、又フランスの、新しい生活力の開花して行く様子の反映。ソヴェトの文化の研究。これらすべては私たちの成長のために欠くことの出来ない栄養である。〔一九四六年五月〕・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
・・・明治初年から興隆期にかけてのごく短い期間は、日本のインテリゲンツィアも知的進歩性は摩擦少なく興隆する支配力と共にあり得たのであったが、現在では、真実の知性は社会的矛盾を観破し、帰趨を明らかにするが故に、知識人に対しても民衆に対しても、許可す・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・「わたしは先日、拘留開示の前におあいしたとき、ぜんぜんこの事件には関係ないといいましたが、それはウソで、じつは私が電車を走らせたのです」それに対して、今野弁護人が質問した。「それでは先日、なぜウソをいったのですか。」答「私は飯田さんたち・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
出典:青空文庫