・・・フランスとドイツとの伝統的な恨みというようなものは、芸術が交流して来たあとを見ても事実としては存在しないこと、その言葉は大衆の祖国愛を利己的に利用しようとする戦争煽動者の口ぐせにすぎないということを、フランスの若い世代はよく理解している。そ・・・ 宮本百合子 「私の信条」
・・・どうかすると二三日くらい拘留せられていることもある。そんな時は女房が夜も昼も泣いている。拘留場で横着を出すと、真っ暗い穴に入れられる。そんな時はツァウォツキイも「ああ、おれはなんと云う不しあわせものだろう」とこぼしている。 ある時ツァウ・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
・・・その後仏教の興隆とともにますます芸術的精練を加えた「偶像」が、いかにわれらの祖先の心に美的魅力を投げ掛けたかは想像するに難くない。ほとんど芸術を持たなかった野蛮人が、たちまちにして生にあふれた芸術品の持ち主となったのだから。 試みに見よ・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
出典:青空文庫