・・・林を伐るときはね、よく一年中の強い風向を考えてその風下の方からだんだん伐って行くんだよ。林の外側の木は強いけれども中の方の木はせいばかり高くて弱いからよくそんなことも気をつけなけぁいけないんだ。だからまず僕たちのこと悪く云う前によく自分の方・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・果樹整枝法その四、又その一、水平コルドン。はじめっ。一、二、一、二、一、二、一、二、一、やめい。」大将「次はその又二、直立コルドン。これはこのままでよろしい。ただ呼称だけを用うる。一、二、一、二、よろしいか。八番。」兵卒八「直立コル・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
・・・ 今日はコルホーズの大きいのを見た。トラクターが働いての収穫後の藁山。そこへ雪がかかっている。 ああはやく、はやく! あっちに高い「エレバートル」が見える!『コンムーナ』という地方農民新聞を手に入れた。五日に二度発行、十頁、オム・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・母ジェニファーの新しい愛人、そして良人として現われたコルベット卿をやっている俳優が、英国風の紳士というものを何か勘ちがいして、英国名物のチャンバーレン、蝙蝠傘は忘れずその手に持参しているばかり、到ってユーモアも男らしい複雑な味もなく一番つま・・・ 宮本百合子 「雨の昼」
・・・でコルベールがいう一寸した科白を、ある日本の作家が女性の洗練された話術の感覚の見本としてほめていたが、果してそれをすぐコルベールの身についたものということが出来るだろうか。有名だった「夢見る唇」の中でベルクナアが妻を演じて、苦しいその心のあ・・・ 宮本百合子 「映画女優の知性」
・・・国内戦のときにトポーロフはパルチザンを組織し、コルチャック軍と闘った。「五月の朝」が出来るときには本気になってその組織のために働いた。そういう仕事がすむと教区学校以来二十年の経験をかさねた小学校教師として、コンムーナの文化向上を終身の職務と・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・このごろは秋もふけて、深夜に外をあるくと、屋根屋根におく露が、明けがたのひとときは霜に凝るかと思うほどしげく瓦やトタンをぬれ光らせている。戦いに年が暮れるのだろうか。 この間二晩つづけて、東京には提灯行列があった。ある会があって、お濠端・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・デニキン、コルチャック、ウランゲルらによる国内戦と飢饉と大移動と、それにたいするボルシェヴィキの奮闘などは、ロシアの全人民に無限の経験とエピソードとをもたらした。全人口が「語るべき何事かを」生きたのであった。私たちに近親な作家として、たとえ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ ああやって伐るのは惜しいようだが、また自分の手で、あれほどの大木を伐り倒せたら、面白かろうなあ。 すっかりまるはだかにされた樹々が、一枚の葉さえないような太い枝を、ブッツリ中途から切られて、寒げに灰色の空に立つ様子。塒を奪われた烏・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・静かな、学問に凝る、今は唯一の父様っ子です。母のロザリーに対しては、勿論実におだやかで親切ですが、彼女が求める率直な感情の吐露は欠けているように思われます。 ハフの不名誉な事件後ドラは愈々家におらなくなりました。それどころか、或る晩、ロ・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
出典:青空文庫