・・・作家が、自己というものを百万人の一人としての生活の実感で把握しなおし、文学的確信の再建を可能にするのは、窮極において生活と文学との現実に徴してゆくことしかない。 益々強靭である故に美しく、複雑な事象の波瀾におどろかない史眼、その洞察力の・・・ 宮本百合子 「作家と時代意識」
・・・しかしながら、新聞は、繭の高価を見越し、米の上作を見越して債権者はこの秋こそ一気に数年来の貸金をとり立てようとしているから、それを注意せよ、当局もそこから生じる紛争を警戒している、というのである。農民は今日の社会的事情にあっては、実った稲を・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・現代文学に、全き人間性の再建として、模索されている社会性の課題は、近代の社会生活の中にある人間を、北欧の伝説にあるような単純な原人に還らすことでもなければ、現代史の中の理性の確執を、日本の馬鹿囃の太鼓の音にまぎらすことでもない。社会と個人の・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・、「獄」、「第一義の道」、「再建」などによってこの数年来思想的放浪に置かれた知識階級の良心の支柱となり得るかのような作品の居住居を示して来たこの作家は、「生活の探求」に到って一つの転回を示した。これは、都会の大学に苦学的な学生生活を営んでい・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ ロマンティストたちの破れた夢のみなもとまで探り入って、その底にある仕組みにふれて、人間再建がのぞまれた時代を経て、最近の数年は多くの作家・評論家にとって、女は題材であり無視出来ない読者ではあるが、真の芸術的な主題として把握して、その運・・・ 宮本百合子 「職業のふしぎ」
・・・工業化債権に、スモーリヌイの勤務者が何ルーブル応募したとかいう報告が書かれている。―― 壁新聞は、СССРじゅう至るところの役所、工場の職場、学校で発行されている。大抵、手書きである。漫画、写真をはったの、新聞雑誌からの切りぬきを編輯し・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
一 深大な犠牲をはらって西欧におけるファシズムを粉砕したソヴェト同盟では、平和が克復するとすぐ、物質と精神の全面に精力的な再建がはじまった模様である。たとえば、ドニェプルの大発電所は、第一次五ヵ年・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ ヨーロッパの婦人たちが、民主平和のヨーロッパ再建のための連合国憲章にもとづいて、婦人たちの大統一戦線をこしらえはじめたこころもちは、同感される。第一次欧州大戦のあと、ヨーロッパ諸国の心ある人々が男も女も、平和の永続のために、どんなに苦・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
六月五日の読売新聞に「女工哀史の寄宿舎通勤制に」という記事が出ていた。 経済再建のトップに立つ日本の紡績界の半封建のままの少女労働の搾取に対して、厚生省が、一、女工寄宿舎制度の撤廃、二、遠隔地からの女工員募集禁止、三、・・・ 宮本百合子 「その檻をひらけ」
・・・島木健作氏の小説「再建」の作品についての感想はここでのべず、それが発売を禁止されたことは、一般的な問題として当時多くの人々からも不賛成を示された近い一つの事実であった。「モスクワ」という作品は芸術品として見た場合、芸術以前のものであり、・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
出典:青空文庫