・・・たとえばポオとレニンが比較されて、ポオがレニンに策士だといって蔭口をきいたといった風なゴシップは愉快だからな。何よりも僕の考えていることは、友人面をしてのさばりたくないことだ。君の手紙のうれしかったのは、そんな秘れた愛情の支持者があの中にい・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・そして、自分達も、文学研究会では、やたらに文学団体の各名称について通をふりまわし、作詩と称して実際生活から遊離した言葉をこねくりまわして、並べたり、千切ったりするようになった。 当時は、技術的に一応出来上っていた同伴者作家が、全露作家協・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 住いは六十五のとき下谷徒士町に移り、六十七のとき一時藩の上邸に入っていて、麹町一丁目半蔵門外の壕端の家を買って移った。策士雲井龍雄と月見をした海嶽楼は、この家の二階である。 幕府滅亡の余波で、江戸の騒がしかった年に、仲平は七十・・・ 森鴎外 「安井夫人」
出典:青空文庫